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「太平記」正成兄弟討死事(その2)

直義ただよし朝臣の乗られたりける馬、矢尻をひづめに踏み立てて、右の足を引きける間、楠木が勢に追つ詰められて、すでに討たれ給ひぬと見へけるところに、薬師寺十郎次郎ただ一騎、蓮池はすいけつつみにて返し合はせて、馬より飛んでり、二尺にしやく五寸の小長刀こなぎなたの石突きを取り延べて、懸かる敵の馬の平首、胸繋むながひの引きまはし、切つては刎ねたふし刎ね倒し、七八騎がほど切つて落としけるその間に、直義ただよしは馬を乗り替へて、遥々落ち延び給ひけり。左馬のかみ楠木に追つ立てられて引き退くを、将軍見給ひて、「新手を入れ替へて、直義討たすな」と下知されければ、吉良きら石堂いしたうかう・上杉の人々六千余騎にて、湊河の東へ駆け出でて、後を切らんとぞ取り巻きける。




直義朝臣(足利直義。尊氏の同母弟)が乗った馬は、矢尻を蹄に踏み立てて、右足を引く間に、楠木の勢に追い詰められて、すでに討たれると見えるところに、薬師寺十郎次郎がただ一騎、蓮池(現兵庫県神戸市長田区蓮池)の堤で返し合わせて、馬から飛んで下り、二尺五寸の小長刀の石突き([太刀の鞘尻の部分])を持ち、懸かる敵の馬の平首([馬の首の両側の平らな所])、胸繋([鞍橋くらぼねを固定するために馬の胸から鞍橋の前輪の四緒手しをでにかけて取り回す緒])の引き廻しにかけて、切り回しては刎ね倒し刎ね倒し、七八騎ほど切って馬から落とすその間に、直義は馬を乗り替えて、遥々と落ち延びました。左馬頭(足利直義)が楠木に追っ立てられて引き退くのを、将軍(足利尊氏)は見て、「新手に入れ替えよ、直義を討たすな」と命じたので、吉良(吉良満義みつよし)・石堂(石塔頼房よりふさ)・高(高師直もろなほ師泰もろやす)・上杉(上杉憲顕のりあき)の人々がは六千余騎で、湊川(現神戸市兵庫区)の東へ駆け出て、後ろを切ろうと勢を取り巻きました。


続く


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by santalab | 2016-02-09 02:00 | 太平記 | Comments(0)

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