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「太平記」長崎新左衛門尉意見の事付阿新殿の事(その1)

当今たうぎん御謀反の事露顕の後御くらゐやが持明院殿ぢみやうゐんどのへぞまゐらんずらんと、近習きんじふの人々青女房あをにようばうに至るまで悦び合へるところに、土岐が討たれし後もかつてその沙汰もなし。今また俊基としもと召し下されぬれども、御位の事に付けては何なる沙汰ありとも聞こえざりければ、持明院殿方の人々案に相違して五噫ごいうたふ者のみ多かりけり。さればとかくまうし進むる人のありけるにや、持明院殿より内々関東へ御使ひを下され、「当今御謀反のくはだて近日事すでにきふなり。武家速やかに糾明きうめいの沙汰なくば天下の乱近きにあるべし」とおほせられたりければ、相摸入道さがみにふだう、「げにも」と驚いて、宗との一門・並びに頭人とうにん評定衆ひやうぢやうしゆを集めて、「こ事いかんあるべき」と各々所存を問はる。




当今(第九十六代後醍醐天皇)の謀反が露顕した上は帝位はやがて持明院殿(北朝初代、光厳天皇)のものとなるものと、近習の人々青女房([貴人に仕える年若い身分のさほど高くない女官])にいたるまでよろこんでいましたが、土岐(土岐頼貞よりさだ)が討たれた後(頼貞はその後復活するけれど)も沙汰はありませんでした。今また俊基(日野俊基)が鎌倉に召し下されましたが、位のことについては何の沙汰があるとも聞こえなかったので、持明院殿方の人々は期待がはずれて五噫を詠う([嘆き憂えること])者ばかりでした。ならばとにかく申し入れてみようとする人がいたのか、持明院殿より内々関東へ使いを下し、「当今ご謀反の企ては近日に迫り事はすでに急を告げておる。武家が速やかに糾明([罪や不正を糾問し、真相を 明らかにすること])しなければ天下の乱が近く起こるであろう」と申したので、相摸入道(鎌倉幕府第十四代執権、北条高時たかとき)は、「もっともなことよ」と驚いて、主な一門・並びに頭人([鎌倉・室町幕府における引付衆=評定衆を補佐して訴訟・庶務を取り扱った職。の長官])・評定衆([執権のもとで裁判、政務を合議した職])を集めて、「どうしたものか」と各々に意見を求めました。


続く


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by santalab | 2016-02-22 07:28 | 太平記 | Comments(0)

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