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「太平記」筑紫合戦の事(その5)

故郷こきやうに留め置きし妻子どもは、出でしをつひの別れとも知らで、帰るを今やとこそ待つらめと、あはれに思えければ、一首の歌を袖の笠符かさじるしに書きて故郷へぞ送りける。

故郷ふるさと今夜こよひ計りの 命とも しらでや人の 我を待つらん

肥後のかみ武重たけしげは、「四十有余しじふいうよの独りの親の、只今討ち死にせんとて大敵に向かふ戦ひなれば、一所にてこそともかうも成り候はめ」と、再三まうしけれども、「なんぢをば天下の為に留むるぞ」と父が庭訓ていきん堅ければ、武重無力これを最後の別れと見捨てて、泣く泣く肥後へかへりける心のうちこそあはれなれ。




故郷に留め置いた妻子どもは、これを最後の別れとも知らずに、帰るのを今かと待っておるであろうと、哀れに思われて、(菊池武時たけとき=寂阿は)一首の歌を袖の笠符に書いて故郷に送りました。

故郷では妻子どもがわしが今夜ばかりの命とも知らずに、帰りを待っておることであろう。

肥後守武重(菊池武重たけしげ。菊池武時の嫡男)は、「四十あまりのただ一人の親が、討ち死にしようと大敵に向かう戦いならば、一所でいかにもなりましょう」と、再三申しましたが、「お前を天下のために留め置く」と父が固く庭訓([家庭での教訓])したので、武重は仕方なくこれを最後の別れと見捨てて、泣く泣く肥後へ帰る心の内は悲しいものでした。


続く


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by santalab | 2016-03-06 07:42 | 太平記 | Comments(0)

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