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「太平記」僧徒六波羅召捕事付為明詠歌の事(その1)

事の漏れ安きは、わざはひを招くなかだちなれば、大塔宮おほたふのみやの御振る舞ひ、禁裡きんり調伏てうぶくの法被行事ども、一々に関東へ聞こへてけり。相摸入道さがみにふだうおほきに怒つて、「いやいやこの君の御在位ざいゐのほどは天下静まるまじ。所詮君をば承久しようきうの例に任せて、遠国をんごくへ移しまゐらせ、大塔宮を死罪に処し奉るべきなり。先づこの頃殊に竜顔りようがん咫尺しせきし奉つて、当家たうけを調伏し給ふなる、法勝寺ほつしようじ円観ゑんくわん上人・小野をの文観もんくわん僧正・南都の智教ちけう教円けうゑん浄土寺じやうどじ忠円ちゆうゑん僧正を召し取りて、子細を相尋あひたづぬべし」と、すでに武命を含んで、二階堂にかいだう下野しもつけ判官はうぐわん長井ながゐ遠江とほたふみかみ二人ににん、関東より上洛しやうらくす。両使りやうしすでに京着きやうちやくせしかば、「またいかなる荒き沙汰をか致さんずらん」と、主上宸襟を悩まされけるところに、五月十一日の暁、雑賀隼人さいがはやとすけを使ひにて、法勝寺の円観上人・小野の文観僧正・浄土寺の忠円僧正、三人を六波羅へ召し取り奉る。




事の漏れ易きは、禍いを招く元ということで、大塔宮(護良もりよし親王)の振る舞い、禁裡([宮中])で調伏の法を行わせていることが、一々関東(鎌倉幕府)の知るところとなりました。相摸入道(鎌倉幕府第十四代執権、北条高時たかとき)はたいそう怒って、「なんということかこの君(第九十六代後醍醐天皇)が在位のほどは天下は静まるまい。結句君を承久の例に任せて、遠国に遷し、大塔宮を死罪に処すべき事ぞ。まずはこの頃とりわけ竜顔に咫尺([貴人の前近くに出て拝謁すること])し、当家を調伏しておるという、法勝寺の円観上人・小野文観僧正・南都の智教・教円・浄土寺の忠円僧正を捕らえて、子細を聞くほかあるまい」との、武命により、二階堂下野判官(二階堂高元たかもと?)・長井遠江守二人が、関東より上洛しました。両使が京着すると、「またどのような厳しい沙汰があることか」と、主上は宸襟を悩まされていましたが、五月十一日の暁に、雑賀隼人佐を使いに立てて、法勝寺の円観上人・小野文観僧正・浄土寺の忠円僧正の、三人を六波羅探題に連行しました。


続く


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by santalab | 2016-03-08 07:56 | 太平記 | Comments(0)

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