Santa Lab's Blog


「太平記」越中守護自害の事付怨霊の事(その5)

余りの不思議さに舟人ふなうどこの男の袖を引かへて、「さるにても誰人たれびとにて御渡り候ふやらん」と問ひたりければ、男答へて云はく、「我らは名越なごや遠江とほたふみかみ・同じき修理しゆりの亮・並びに兵庫ひやうごの助」と各々名乗つて、掻き消すやうに失せにけり。天竺てんぢく術婆伽じゆつばがは后を恋して、思ひのほのほに身を焦がし、我がてうの宇治の橋姫は、夫を慕ひて片敷く袖を波にひたす。これ皆上古の不思議、旧記きうきに載するところなり。まのあたり斯かる事の、うつつに見へたりける亡念まうねんのほどこそ罪深けれ。




余りの不思議さに舟人はこの男の袖を引いて、「いったいどなたでございますか」と訊ねると、男は答えて、「我らは名越遠江守(北条時有ときあり)・同じく修理亮(北条有公ありとも)・並びに兵庫助(北条助貞持さだもち)」と各々名乗って、掻き消すようにいなくなってしまいました。天竺([インド])の術婆伽は后を恋して、思いの炎に身を焦がし、我が朝の宇治の橋姫は、夫を慕いて片敷く袖を波に浸す(『さむしろに 衣かたしき 今宵もや 我をまつらん 宇治の橋姫』)。これは皆上古の不思議で、旧記に載っているものです。まのあたりこのような物が、現に見えたその亡念のほどこそ罪深いものでした。


続く


[PR]
by santalab | 2016-03-13 08:36 | 太平記 | Comments(0)

<< 「太平記」僧徒六波羅召捕事付為...      「太平記」僧徒六波羅召捕事付為... >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
返歌 草枕…に因んで短歌..
by 井上勇 at 23:54
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧