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「太平記」金剛山寄手ら被誅事付佐介貞俊事(その6)

去るほどに、平氏の一族皆出家して、召人めしうとに成りし後は、武家被官ひくわんの者ども、悉く所領しよりやうを被召上、宿所を被追出て、わづかなる身一つをだにき兼ねて、貞俊さだとしも阿波の国へ被流てありしかば、今は召し仕ふ若党わかたう中間ちゆうげんも身に不傍、昨日の楽しみ今日の悲しみと成つて、ますます身を責むるていに成り行きければ、盛者必衰しやうじやひつすゐことわりの中にありながら、今更世の中無情思えて、如何なる山の奥にも身を隠さばやと、心にあらまされてぞ居たりける。さても関東くわんとうの様何とか成りぬらんとたづね聞くに、相摸入道にふだう殿を始めとして、一族以下いげ一人も不残、皆被討給ひて、妻子従類さいしじゆうるゐも共に行き方を不知成りぬと聞こへければ、今は誰を憑み、何を可待世とも不覚、見るに付け聞くに随ひて、いとど心をくだき、きもを消しけるところに、関東奉公の者どもは、一旦命をたすからん為に、降人かうにんに雖出と、つひには如何にも野心ありぬべければ、悉く可被誅とて、貞俊また被召捕てげり。




やがて、平氏の一族は皆出家して、召人([罪人])となった後は、武家は被官の者どもの、所領を残るところなく召し上げて、宿所を追い出したので、わずかな身一つさえ置き兼ねかねました、貞俊(北条貞俊)もまた阿波国へ流罪となって、今は召し使う若党・中間([公家、武家、寺家などに仕える僕従])も身に添わず、昨日の楽しみは今日の悲しみとなって、ますます身を責めるところとなり、盛者必衰の理とは言いながら、今更に世の中が無情に思えて、どのような山奥にでも身を隠そうと、思うようになりました。それにしても関東はどうなったのかと訊ね聞くと、相摸入道殿(鎌倉幕府第十四代執権、北条高時たかとき)をはじめとして、一族以下が一人も残らず、皆討たれて、妻子従類もともに行き方知らずと聞こえたので、今は誰を頼み、何を待つべき世とも思えませんでした、見るに付け聞くに随い、いっそう心を砕き、肝を消すところに、関東奉公の者どもが、一旦の命を助かるために、降人に出ましたが、遂には野心があるもやと、残らず討つべしと、貞俊もまた召し捕られました。


続く


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by santalab | 2016-03-19 09:58 | 太平記 | Comments(0)

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