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「太平記」三人の僧徒関東下向の事(その3)

円観上人計りこそ、宗印そういん円照ゑんせう道勝だうしようとて、如影随形によやうずゐぎやうの御弟子三人、随逐ずゐちくして輿の前後に供奉しけれ。その外文観僧正・忠円僧正には相随あひしたがふ者一人もなくて、怪しげなる伝馬に乗せられて、見馴れぬ武士に打ち囲まれ、まだ夜深きに鳥が鳴くあづまの旅に出で給ふ、心のうちこそあはれなれ。鎌倉までも下し着けず、道にて失ひ奉るべしなんど聞こへしかば、かしこの宿に着いても今や限り、ここの山に休めばこれや限りと、露の命のあるほども、心は先に消えつべし。昨日きのふも過ぎ今日けふも暮れぬと行くほどに、我とは急がぬ道なれど、日数積もれば、六月二十四日に鎌倉にこそ着きにけれ。




円観上人ばかりは、宗印・円照・道勝という、如影随形([影が必ず形に寄り添っているようであること])の弟子三人が、随逐([随逐=あとを追い、従うこと])して輿の前後に供奉していました。ほかの文観僧正・忠円僧正には従う者は一人もなくて、怪しげな伝馬([宿駅で馬を乗り継ぐ馬])に乗せられて、見馴れぬ武士に打ち囲まれ、まだ夜深いうちに鳥が鳴く(東国の夜明けは早い)東国の旅に出る、心の内は哀れなものでした。鎌倉まで着くことなく、道中で失うのではないかと聞いていたので、かしこの宿に着いても今を限り、ここの山に休めばこれが限りと、露の命のあるほども、心は先に消えるようでした。昨日も過ぎ今日も暮れたと行くほどに、急がぬ道ではありましたが、日数積もって、六月二十四日に鎌倉に着きました。


続く


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by santalab | 2016-03-19 18:08 | 太平記 | Comments(0)

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