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「太平記」正成天王寺未来記披見の事(その2)

宿老しゆくらうの寺僧答へて云はく、「太子守屋の逆臣を討つて、始めてこの寺を建てて、仏法を被弘さふらひし後、神代より始めて、持統ぢとう天皇てんわうの御宇に至るまでを被記たる書三十巻さんじつくわんをば、前代旧事本記ぜんだいくじほんぎとて、卜部うらべ宿祢すくねこれを相伝さうでん有職いうしよくの家を立て候ふ。その外にまた一巻いつくわんの秘書を被留て候ふ。これは持統天皇以来末世代々の王業わうげふ、天下の治乱を被記て候ふ。これをばたやすく人の披見する事は候はねども、以別儀密かに見参に入れ候ふべし」とて、すなはち秘府の銀鑰ぎんやくを開いて、金軸こんぢくの書一巻いつくわんを取り出だせり。正成悦びすなはちこれを披覧するに、不思議の記文きもん一段あり。そのもんに云はく、

当人王九十五代。天下一度ひとたび乱れて而しゆ不安。この時東魚とうぎよ来たつて呑四海。日没西天三百七十しちじふ余箇日。西鳥せいてう来たつて食東魚を。その後海内かいだい帰一三年。如獼猴みこう者掠天下三十余年。大凶変じて帰一元。云々。




宿老の寺僧が答えて申すには、「太子(聖徳太子)が守屋(物部守屋)の逆臣を討って、初めてこの寺(現大阪市天王寺区にある四天王寺)を建てて、仏法を広められた後、神代より始めて、持統天皇(第四十一代天皇)の御宇に至るまでを記した書三十巻を、前代旧事本記(『先代旧事本紀』。ただし全十巻)と申して、卜部宿祢がこれを相伝して有職([公家・武家などの行事、儀式、官職等に 関係する知識と、それに詳しい者])の家を立てられました。そのほかにまた一巻の秘書がございます。これは持統天皇以来末世代々の王業、天下の治乱を記したものでございます。これを容易く人が披見することはできませんが、特別に密かにご覧に入れましょう」と申して、たちまち秘府の銀鑰([銀の鍵])を開いて、金軸の書一巻を取り出しました。正成(楠木正成)早よろこんでたちまちこれを披覧すると、不思議な記文が一段ありました。その文には、

人王九十五代に当たり。天下は一度乱れて主は安からず。この時東魚がやって来て四海を呑む。日は西天に没して三百七十余箇日。西鳥がやって来て東魚を食す。その後海内一に帰すこと三年。獼猴([大猿])の者が天下を掠めて三十余年。大凶変じて一元に帰す。云々。


続く


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by santalab | 2016-04-02 19:24 | 太平記 | Comments(0)

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