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「太平記」正成天王寺未来記披見の事(その3)

正成不思議に思へて、よくよく思案してこのもんを考ふるに、先帝既に人王にんわうの始めより九十五代に当たり給へり。「天下一度ひとたび乱れて主不安」とあるはこれこの時なるべし。「東魚とうぎよ来たつて呑四海」とは逆臣相摸入道の一類いちるゐなるべし。「西鳥せいてう食東魚を」とあるは関東くわんとうを滅ぼす人可有。「日没西天に」とは、先帝隠岐の国へ被遷させ給ふ事なるべし。「三百七十しちじふ余箇日」とは、明年みやうねんの春の頃この君隠岐の国より還幸くわんかう成つて、再び帝位に即かせ可給事なるべしと、文の心を明らかにかんがふるに、天下の反覆へんふく久しからじと憑もしく思えければ、金作こがねづくりの太刀一振りこの老僧に与へて、この書をば本の秘府にをさめさせけり。後に思ひ合はするに、正成まさしげかんがへたる所、更に一事も不違。これまことに大権聖者だいごんのしやうじやの末代をかんがみて記し置き給ひし事なれども、文質三統ぶんしつさんとう礼変れいべん、少しもたがはざりけるは、不思議なりし讖文しんもんなり。




正成(楠木正成)は不思議に思って、よくよく思案してこの文の意味するところを考えれば、先帝(第九十六代後醍醐天皇)はすでに人王の始めより九十五代に当たっておられる。「天下は一度乱れて主安からず」とあるのはこの時のことであろう。「東魚来たって四海([国内])を呑む」とは逆臣相摸入道(鎌倉幕府第十四代執権、北条高時たかとき)の一類のことに違いない。「西鳥東魚を食う」とあるのは関東(鎌倉幕府)を滅ぼす人がいるということよ。「日が西天に没す」とは、先帝が隠岐国へ遷されたことであろう。「三百七十余箇日」とは、明年の春頃この君が隠岐国より還幸されて、再び帝位に即かるということであろうと、文の意味するところを明らかにすれば、天下の反覆は長いことではないと頼もしく思われて、黄金作りの太刀([太刀の金具を金銅づくりにしたもの])を一振りこの老僧に与えて、この書を元の秘府に納めさせました。後に思い合わせると、正成が考えるところに、まったく異なりませんでした。これはまこと大権聖者([菩薩])が末代を予測して記し置いたものでしたが、文質([忠質文]=[忠は夏、質は殷、文は周。の優れた学識])三統([三統説]=[天統=夏、地統=殷、人統=周というように「三」を周期に王朝が循環するという説])の礼変に、少しも違いはありませんでした、まこと不思議な讖文([予言を記した文書。未来記])でした。


続く


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by santalab | 2016-04-02 19:29 | 太平記 | Comments(0)

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