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「太平記」千剣破城軍の事(その1)

千剣破ちはやの城の寄せ手は、まへの勢八十万騎はちじふまんぎに、また赤坂の勢吉野の勢馳せくははつて、百万騎に余りければ、城の四方しはう二三里が間は、見物相撲すまふの場の如く打ち囲んで、尺寸せきすんの地をも余さず満ち満ちたり。旌旗せいきの風にひるがへつて靡く気色は、秋の野の尾花をばなすゑよりも繁く、剣戟けんげきの日に映じて耀かかやきける有様は、暁の霜の枯れ草にけるが如くなり。大軍の近付く処には、山勢これが為に動き、鬨の声の震るふ中には、坤軸こんぢく須臾しゆゆくだけたり。この勢にも恐れずして、わづかに千人に足らぬ小勢にて、誰を憑みいつを待つともなきに、城中じやうちゆうこらへて防ぎ戦ひける楠木が心のほどこそ不敵なれ。




千早城(現大阪府南河内郡千早赤阪村)の寄せ手は、前からの勢八十万騎に、また赤坂の勢吉野の勢が馳せ加わって、百万騎に余るほどでしたので、城の四方二三里の間は、まるで見物相撲の場のように打ち囲んで、尺寸([わずか])の土地をも余さず充満していました。旌旗([旗印])が風に翻って靡く様は、秋の野の尾花([薄])の穂先よりも繁く、剣戟が日に映じて輝く有様は、暁の霜が枯れ草に付いたようでした。大軍の近付く所には、£山も動き、鬨の声が響けば、坤軸([大地の中心を貫き支えていると想像される軸])も須臾([一瞬])にして砕けるばかりでした。この勢にも恐れず、わずかに千人にも足りぬ小勢で、誰を頼みいつを待つともなく、城中に堪えて防ぎ戦う楠木(楠木正成)の心のほどこそ不敵([大胆でおそれを知らないこと])でした。


続く


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by santalab | 2016-04-07 08:26 | 太平記 | Comments(0)

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