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「太平記」千剣破城軍の事(その3)

ここに赤坂の大将金沢かなざは右馬の助、大仏おさらぎ奥州あうしうに向かつてのたまひけるは、「前日赤坂を攻め落としつる事、全く士卒の高名かうみやうに非ず。城中の構へを推し出だして、水を止めてさふらひしに依つて、敵ほどなく降参かうさん仕りさふらひき。ここを以つてこの城を見候ふに、これほどわづかなる山のいただき用水ようすゐあるべしとも思え候はず。また上げ水なんどを他所の山より懸くべき便りも候はぬに、城中に水たくさんにありげに見ゆるは、いかさま東の山の麓に流れたる渓水たにみづを、夜々よるよる汲むかと思えて候ふ。あはれ宗との人々一両人におほせ付けられて、この水を汲ませぬ様に御計らひ候へかし」と被申ければ、両大将、「この義可然思え候ふ」とて、名越なごや越前ゑちぜんかみを大将としてその勢三千余騎を指し分けて、水の辺に陣を取らせ、城より人り下りぬべき道々に、逆茂木さかもぎを引いてぞ待ち懸けける。




ここに赤坂の大将金沢右馬助(北条貞冬さだふゆ)が、大仏奥州(北条貞直さだなほ)に向かって申すには、「前日赤坂城(現大阪府南河内郡千早赤阪村)を攻め落としたのは、まったく士卒の高名ではない。城中の構えを見て、水を止めたので、敵はほどなく降参しただけのこと。それを以ってこの城を見れば、これほど小さな山の頂に用水があるとも思えぬ。また上げ水を他所の山より引くとも思えぬが、城中に水が大量にあるように見えるのは、きっと東の山の麓に流れる渓水を、夜々汲んでおるのではないか。一家の人々一両人に命じて、この水を汲ませぬように計らわれよ」と申したので、両大将は、「なるほどのう」と申して、名越越前守(北条時見ときみ)を大将としてその勢三千余騎を指し分けて、水の辺に陣を取らせ、城より人が下りそうな道々に、逆茂木を引いて待ち懸けました。


続く


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by santalab | 2016-04-09 08:47 | 太平記 | Comments(0)

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