Santa Lab's Blog


「太平記」千剣破城軍の事(その8)

大将の下知げぢに随ひて、軍勢皆軍を止めければ、慰む方やなかりけん、あるひは碁・双六しごろくを打つて日を過ごし、あるひは百服茶ひやつぷくちや褒貶はうへんの歌合はせなんどをもてあそんで夜を明かす。これにこそ城中の兵は中々被悩たる心地して、心を遣る方もなかりける。少しほど経て後、正成、「いでさらば、また寄せ手たばかりて居眠ゐねぶり覚まさん」とて、あくたを以つて人長ひとだけ人形にんぎやうを二三十作つて、甲冑かつちうを着せ兵杖ひやうぢやうを持たせて、夜中やちゆうに城の麓に立て置き、まへ畳楯でふだてを突き双べ、その後ろにすぐりたるつはもの五百人を交へて、夜のほのぼのと明けける霞の下より、同時に鬨をどつと作る。




大将の下知([命令])に従って、軍勢は皆軍を止めたので、気を晴らそうとしてか、あるは碁・双六を打って日を過ごし、ある者は百服茶([南北朝・室町時代に流行した闘茶。栂尾とがのを産の本茶とそれ以外の非茶とに分けててた茶を百服飲み、その本非を言い当てるもの])・褒貶([事のよしあしを言うこと])の歌合わせなどをして夜を明かしました。これを城中の兵は羨んで、慰めようもありませんでした。少しほど経て後、正成(楠木正成)は、「ならば、また寄せ手を欺いて眠りを覚ましてやろう」と申して、芥(藁屑)で人丈の人形を二三十作って、甲冑を着せ兵杖([太刀])を持たせて、夜中に城の麓に立て置き、前には畳楯を突き双べ、その後ろに選りすぐった兵を五百人を交えて、夜がのほのぼのと明ける霞の下より、同時に鬨をどっと作りました。


続く


[PR]
by santalab | 2016-04-14 07:59 | 太平記 | Comments(0)

<< 「太平記」千剣破城軍の事(その9)      「太平記」千剣破城軍の事(その7) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
すみません、日本語の起源..
by 春日 at 21:17
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧