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「太平記」千剣破城軍の事(その13)

去るほどに吉野・戸津河とつがは・宇多・内郡うちのこほりの野伏ども、大塔宮おほたふのみやの命を含んで、相集あひあつまる事七千余人、ここの峯かしこの谷に立ち隠れて、千剣破ちはやの寄せ手どもの往来わうらいの路を差し塞ぐ。これによつて諸国のつはもの兵粮ひやうらう忽ちに尽きて、人馬共に疲れければ、転漕にこらへ兼ねて百騎・二百騎引いて帰る処を、案内者の野伏ども、所々の詰まり詰まりに待ち受けて、討ち留めける間、日々夜々に討たるる者数を知らず。希有にして命計りを助かる者は、むま・物の具を捨て、衣裳いしやうを剥ぎ取られて裸なれば、あるひはれたる蓑を身に纏ひて、膚計はだへばかりを隠し、あるひは草の葉を腰に巻いて、恥を顕はせる落人ども、毎日に引きも切らず十方へ逃げ散る。前代未聞の恥辱なり。されば日本国の武士どもの重代したる物の具・太刀・刀は、皆この時に至つて失せにけり。




やがて吉野・十津川・宇多・宇智郡の野伏どもが、大塔宮(護良もりよし親王)の命に従い、集まること七千余人、ここの峯かしこの谷に立ち隠れて、千早城への寄せ手どもの往来の路を塞ぎました。これによって諸国の兵の兵粮はたちまち底を尽いて、人馬ともに疲れて、転漕([兵糧を陸と海から運ぶこと])を待つのを諦めて百騎・二百騎と引いて帰るところを、土地勘のある野伏どもが、所々の詰まり詰まりに待ち受けて、討ち止めたので、日々夜々に討たれる者は数知れませんでした。わずかに命ばかりを助かる者は、馬・物の具([武具])を捨て、衣裳を剥ぎ取られて裸でしたので、ある者は破れた蓑を身に纏い、膚ばかりを隠し、ある者は草の葉を腰に巻いて、恥を晒す落人どもが、毎日引きも切らず十方へ逃げ散りました。前代未聞の恥辱でした。こうして日本国の武士どもの重代の物の具・太刀・刀は、皆この時に失せました。


続く


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by santalab | 2016-04-19 12:03 | 太平記 | Comments(0)

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