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「太平記」将軍御逝去事(その1)

同じき年四月二十日、尊氏たかうぢきやうの背中に癰瘡ようさう出でて、心地例ならずおはしければ、本道ほんだう外科げくわの医師数を尽くして参り集まる。倉公さうこう華他くわたが術を尽くし、君臣佐使さしの薬を施し奉れどもさらに験なし。陰陽おんやうかみ有験うげんの高僧集まつて、鬼見きけん太山府君たいさんぶくん星供しやうく冥道供みやうだうく・薬師の十二神将じふにじんじやうの法・愛染明王あいぜんみやうわう・一字文殊・不動慈救ふどうじく延命の法、種々の懇祈こんきを致せども、病ひ日に随つて重くなり、時を添へて頼み少なく見へ給ひしかば、御所中ごしよぢゆうの男女機を呑み、近習の従者涙を押さへて、日夜寝食を忘れたり。懸かりしほどに、身体次第に衰へて、同じき二十九日寅の刻、春秋五十四歳にてつひ逝去せいきよし給ひけり。




同じ年(正平十三年(1358))四月二十日、尊氏卿(足利尊氏)の背中に癰瘡([悪性のできもの])が出来て、体調おもわしくなく、本道([漢方で、内科のこと])・外科の医師が数を尽くして参りました。倉公(淳于意じゆんうい、前漢初期の人)・華他(華佗かだ。後漢末期の薬学・鍼灸に非凡な才能を持つ伝説的な医師)が術を尽くし、君臣佐使([漢方薬に配合された生薬を、それぞれの役割から君薬=作用の中心的役割を果たす、臣薬=君薬に次いで重要な作用を果たす、佐薬=君薬を助ける役割を果たす、使薬=君臣と佐薬の補助的役割を果たす])の薬を施しましたが効き目はありませんでした。陰陽頭・有験の高僧が集まって、鬼見・太山府君(泰山府君の法)・星供(星供の法)・冥道供([閻魔大王に罪の消滅と長寿を祈願する密教の供養法])・薬師十二神将([薬師十二神将は薬師如来を護る護衛隊の将])の法・愛染明王・一字文殊・不動慈救(不動明王の慈救呪)延命の法、種々の懇祈を致しましたが、病いは日を追うごとに重くなり、時が経つにつれ頼み少なく見えたので、御所中の男女は機を呑み([固唾を呑む]=[息をこらして見守る様子])、近習の従者は涙を押さえて、日夜寝食を忘れました。やがて、身体は次第に衰えて、同じ二十九日の寅の刻([午前四時頃]。史実では四月三十日)、五十四歳で終に逝去しました。


続く


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by santalab | 2016-05-01 18:39 | 太平記 | Comments(0)

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