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「太平記」持明院殿行幸六波羅事(その5)

陶山すやま河野かうの逃ぐる敵には目をも不懸、「西七条辺の合戦何とあらん、無心元」とて、また七条川原しちでうがはら直違すぢかひに西へ打つて七条大宮おほみやひかへ、朱雀しゆじやかの方を見遣りければ、隅田すだ・高橋が三千余騎、高倉左衛門さゑもんすけ・小寺・衣笠が二千余騎に被懸立て、馬の足をぞ立て兼ねたる。河野これを見て、「かくては御方被打ぬと思ゆるぞ。いざや打つて懸からん」と云ひけるを、陶山、「しばし」と制しけり。「そのゆゑはこの陣の軍未だ雌雄決せざるさきに、力を合はせて御方を助けたりとも、隅田・高橋が口のにくさは、我が高名わがかうみやうにぞ云はんずらん。暫く置いて事のやうを御覧ぜよ。敵たとひ勝つに乗るとも何ほどの事か可有」とて、見物してぞ居たりける。




陶山(陶山清直?)・河野(河野通盛みちもり)は逃げる敵には目も懸けず、「西七条辺の合戦はどうなったか、心配よ」と申して、また七条河原を筋違いに西へ打って七条大宮に控え、朱雀の方を見遣れば、隅田・高橋の三千余騎は、高倉左衛門佐・小寺・衣笠の二千余騎に駆け立てられて、馬の足を休め兼ねていました。河野(通盛)はこれを見て、「このままでは味方は討たれると思えるぞ。さあ打って懸かろう」と申すのを、陶山は、「しばらく待て」と制しました。「たとえこの陣の軍がまだ雌雄を決する前に、力を合わせて味方を助けたところで、隅田・高橋のことだ、我が高名と申すことであろう。しばらくこのまま軍の様子を見て見ようではないか。敵がたとえ勝つに乗るとも大したことはあるまい」と、見物していました。


続く


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by santalab | 2016-05-07 08:20 | 太平記 | Comments(0)

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