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「太平記」菊池合戦事(その6)

八月十六日じふろくにちの夜半許りに、菊池先づ夜討ちに馴れたる兵を三百人選つて、山を越え水を渡つて搦め手へまはす。宗との兵七千余騎をば三手に分けて、筑後河のはたに副うて、河音かはおとに紛れて嶮岨けんそへ廻りて押し寄す。大手の寄せ手今は近付かんと思えけるほどに、搦め手の兵三百人敵の陣へ入つて、三処に鬨の声を揚げ十方に走り散つて、敵の陣々へ矢を射懸けて、後ろへ廻つてぞ控へたる。分内せばき所に六万余騎の兵、沓の子を打つたるやうに役所を作り双べたれば、鬨の声に驚き、いづれを敵と見分けたる事もなくここに寄せ合はせかしこに懸け合ひて、をめき叫び追つつかへしつ同士打どしうちをする事数剋すこくなりしかば、小弐せうに憑み切りたる兵三百余人、同士打ちにこそ討たれけれ。




八月十六日の夜半ほどに、菊池(菊池武光たけみつ)はまず夜討ちに馴れた兵を三百人選って、山を越え水を渡って搦め手に向けました。主な兵七千余騎を三手に分けて、筑後川の端に沿って、川音に紛れて嶮岨を廻って押し寄せました。大手の寄せ手が近付くと思えるほどに、搦め手の兵三百人が敵の陣へ入って、三所に鬨の声を上げ十方に走り散って、敵の陣々へ矢を射懸けて、背後に廻って控えました。所狭き所に六万余騎の兵が、沓の子を打った([たくさんの人や物がすきまなく立ち並ぶ様])ように役所([戦陣で、将士が本拠としている所])を作り並べていましたので、鬨の声に驚き、いずれを敵とも見分けることもなくここに寄せ合わせかしこに駆け合って、呼き叫び追いつ返しつ数刻の間同士討ちをしたので、小弐(少弐頼尚よりひさ)が頼み切った兵三百余人は、同士討ちで討たれました(筑後川の戦い)。


続く


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by santalab | 2016-05-12 08:27 | 太平記 | Comments(0)

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