Santa Lab's Blog


「太平記」山徒寄京都事(その6)

彼ら二人ににん、ここに半時許はんじばかり支へて戦ひけれども、続く大衆一人もなし。敵雨の降る如くに射ける矢に、二人ながらじふ余箇所疵をかうむりければ、「今は所存これまでぞ。いざや冥途まで同道どうだうせん」と契りて、よろひ脱ぎ捨て押裸脱おしはだぬぎ、腹十文字じふもんじに掻き切つて、同じ枕にこそ伏したりけれ。これを見る武士ども、「あはれ日本一につぽんいちがうの者どもかな」と、しまぬ人もなかりけり。前陣の軍破れて引つ返しければ、後陣の大勢は軍場をだに不見して、道より山門へ引つ返す。ただ豪鑒がうかん豪仙がうせん二人が振る舞ひにこそ、山門の名をば揚げたりけれ。




彼ら二人(豪鑒がうかん豪仙がうせん)は、ここに半時ばかり留まり戦いましたが、続く大衆([僧])は一人もいませんでした。敵が雨の降る如くに射る矢に、二人ともに十余箇所疵を負って、「思うところ今はこれまでよ。いざ冥途まで同道するぞ」と契って、鎧を脱ぎ捨て押裸脱ぎ([押し肌脱ぐ]=[衣服を脱いで、上半身を現す])、腹を十文字に掻き切って、同じ枕に臥しました。これを見た武士どもは、「なんと日本一の剛の者どもよ」と、惜しまぬ人はありませんでした。前陣の軍が破れて引き返したので、後陣の大勢は軍場をだに見ずして、道より山門(延暦寺)に引き返しました。ただ豪鑒・豪仙二人の振る舞いだけが、山門の名を上げました。


続く


[PR]
by santalab | 2016-05-22 08:32 | 太平記 | Comments(0)

<< 明日に向かって走れ(為せば成る?)      「太平記」八幡御託宣の事(その1) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
返歌 草枕…に因んで短歌..
by 井上勇 at 23:54
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧