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「太平記」園城寺戒壇事(その5)

この告文を被篭て、七日に当たりける夜、主上しゆしやう不思議の御夢想むさうありけり。無動寺むどうじ慶命きやうみやう僧正そうじやう一紙いつし消息せうそくまゐらせていはく、

自胎内之昔、至治天之今、忝雖奉祈請宝祚長久、三井寺戒壇院若被宣下者、可失本懐。

云云。またその次の夜の御夢にかの慶命きやうみやう僧正参内して紫宸殿ししんでんに立たれたりけるが、大きに怒れる気色にて、「昨日一紙の状を雖進覧、叡慮更に不驚給、所詮三井寺の戒壇有勅許者、変年来之御祈、たちまちに可成怨心」とのたまふ。




この告文を籠めて、七日に当たる夜、主上に不思議の夢想がありました。無動寺(現滋賀県大津市にある寺院。延暦寺東塔の一)の慶命僧正が、一紙の消息([文])を参らせて申すには、

(第六十九代後朱雀天皇が)胎内の昔より、治天の今に至るまで、宝祚([天子の位])長久の祈請に勤めて参りましたが、もし三井寺戒壇院の宣下をなされるのでしたら、その本懐を失いましょう。

と。またその次の夜の夢にかの慶命僧正が参内して紫宸殿([平安京内裏 の正殿])に立っていましたが、たいそう怒った顔で、「昨日一紙の状を進覧しましたが、叡慮を驚かすに至らず、ならば三井寺(現滋賀県大津市にある園城寺)の戒壇に勅許の者を、年来の祈りに変えて、たちまちに怨心となすべし」と申しました。


続く


by santalab | 2016-06-25 09:12 | 太平記

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