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「太平記」賀茂神主改補事(その6)

その後天下おほきに乱れて、二くんたび天位を替へさせ給ひしかば、基久・貞久わづかに三四年が中に、三度改補されし。夢幻ゆめまぼろしの世の習ひ、今に始めぬ事とは言ひながら、殊更身の上に知られたる世のあはれに、よしや今はとてもかくてもと思ひければ、

うたたねの 夢よりもなほ あだなるは この頃見つる うつつなりけり

と、基久一首の歌を書き留めて、つひに出家遁世の身とぞなりにける。




その後天下はたいそう乱れて、二君(第九十三代後伏見院・第九十六代後醍醐天皇)は三度を天位を替わられて、基久・貞久はわずか三四年のうちに、三度改補されました。夢幻の世の習いは、今に始まることではありませんでしたが、殊更身の上([運命])というほかない世の中の悲しみに、嘆いたところで仕方のないことよ今となってはどうにもならぬことと思い、

うたたねの夢よりもなお儚いものは、つい今しがた見た現であったか。

と、基久は一首の歌を書き留めて、遂に出家遁世の身となりました。


続く


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by santalab | 2016-09-07 08:59 | 太平記 | Comments(0)

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