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「太平記」備中福山合戦事(その1)

福山に立て籠もるところの官軍くわんぐんども、この由を聞きて、「この城いまだこしらふるに及ばず、かれに付きこれに付き、大敵を支へん事は、叶ふべしとも思へず」とまうしけるを、大江田おいた式部の大輔たいふ、しばらく思案してのたまひけるは、「合戦の習ひ、勝負は時の運に依るといへども、御方の小勢を以つて、敵の大勢に戦はんに、負けずと言ふ事は、千に一つもあるべからず。さながら国を越えて足利殿の上洛しやうらくを支へんとて、向かひたる者が、大勢の寄すればとて、聞き逃げにはいかがすべき。よしやただ一業所感ごふしよかんの者どもが、この所にて皆死ぬべき果報くわはうにてこそあるらめ。死を軽んじ名を重んずる者をこそ人とは申せ。誰々もここにて討ち死にして、名を子孫に残さんと思ひ定められ候へ」と諌められければ、紀伊の常陸・合田あひだ以下いげは、「まうすにや及び候ふ」と領状して討ち死にを一篇いつぺんに思ひまうけてければ、中々心中涼しくぞ思へける。




福山(現岡山県総社市)に立て籠もる官軍どもは、これを聞いて、「この城はまだ完成しておらぬ、いずれにせよ、大敵を防ぐことが、できるとも思えぬ」と申せば、大江田式部大輔(大井田義政よしまさ)が、しばらく思案して申すには、「合戦の習い、勝負は時の運によるといえども、味方の小勢をもって、敵の大勢と戦えば、勝つことは、千に一つもなかろう。とはいえ国を越えて足利殿(足利尊氏)の上洛を防ぐために、向かった者が、大勢が寄せると聞いて、聞き逃げする訳にはゆかぬ。きっと一業所感([人はいずれも、同一の善悪の業ならば同一の果を得るということ])の者どもが、この場所で皆死ぬべき果報なのであろう。l死を軽んじ名を重んずる者を人と申すのだ。誰々もここで討ち死にして、名を子孫に残そうと思い定められよ」と諌めれば、紀伊の常陸・合田以下も者どもは、「申すまでもござらぬ」と領状して討ち死にをたちまちに、覚悟を決めました、心中は清々しいものでした。


続く


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by santalab | 2016-09-17 08:59 | 太平記 | Comments(0)

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