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「太平記」備中福山合戦事(その8)

去るほどにこの道より落人おちうととほりけると聞きて、赤松入道三百余騎を差し遣はして、名和なわ辺にてぞ待たせける。備後のかみわづかに八十三騎にて、大道おほちへと心ざして打ちけるところに、赤松が勢とある山陰に寄せ合つて、「落人と見るはたれ人ぞ。命しくば弓をはづし物の具脱いで降人かうにんに参れ」とぞかけたりける。備後の守これを聞きて、からからと打ち笑ひ、「聞きも習はぬ言葉かな、降人になるべくは、筑紫より将軍の、様々の御教書みげうしよをなしてすかされし時こそならんずれ。それをだに引き裂きて火にべたりし範長のりながが、御辺たちに向かつて、降人にならんと、ゑこそ申すまじけれ。物の具欲しくばいで取らせん」と言ふままに、八十三騎の者ども、三百余騎の中へをめいて駆け入り、敵十二騎斬つて落とし、二十三騎に手負はせ、大勢の囲みを破つて、浜路はまぢを東へぞ落ち行きける。




やがてこの道を落人が通ると聞いて、赤松入道(赤松則村のりむら)は三百余騎を差し遣わして、名和(縄手?現兵庫県姫路市)辺で待たせました。備後守(児島範長のりなが)はわずかに八十三騎で、大道へと急ぐところに、赤松の勢と山陰で遭遇して、「落人と見るが誰だ。命が惜しければ弓を外し物の具([武具])を脱いで降人に参れ」と声をかけました。備後守はこれを聞いて、からからと打ち笑い、「何を申すかと思えば、降人になる積もりなら、筑紫より将軍(足利尊氏)が、様々の御教書([三位以上の貴人の意向を伝える奉書])をなして言いくるめようとした時になっておるわ。それさえ引き裂り火に焚べたこの範長が、お主たちに向かって、降人になろうと、申すはずもない。物の具([武具])が欲しければさあ取らせるぞ」と言うままに、八十三騎の者どもが、三百余騎の中へ喚いて駆け入り、敵十二騎を斬って落とし、二十三騎に手負わせ、大勢の囲みを破って、浜路を東へ落ちて行きました。


続く


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by santalab | 2016-09-26 09:59 | 太平記 | Comments(0)

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