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「太平記」師直以下被誅事付仁義血気勇者の事(その3)

越後ゑちご入道にふだうは半町許り隔たりて打ちけるが、これを見て馬を懸け退けんとしけるを、迹に打ちける吉江小四郎、やりを以つて胛骨せぼねより左のの下へ突きとほす。突かれて鑓に取り付き、懐に指したる打ち刀を抜かんとしけるところに、吉江が中間走り寄り、あぶみの鼻を返して引き落とす。落つれば首を掻き切つて、顎門あぎとのんどへ貫き、とつ付けに着けて馳せて行く。かう豊前ぶぜんの五郎をば、小柴新左衛門しんざゑもんこれを討つ。高の備前のかみをば、井野の弥四郎やしらう組んで落つて首を取る。越後ゑちご将監しやうげんをば、長尾彦四郎ひこしらう先づ馬の諸膝切つて、落つる所を二太刀打つ。打たれて少し弱る時、押さへてやがて首を切る。遠江とほたふみ次郎をば小田左衛門五郎切つて落とす。山口入道をば小林又次郎引つ組んで差し殺す。彦部ひこべ七郎しちらうをば、小林掃部かもんの助後ろより太刀にて切りけるに、太刀影に馬驚きて深田の中へ落ちにけり。彦部引つかへして、「御方はなきか、一所に馳せ寄つて、思ひ思ひに討ち死にせよ」と呼ばはりけるを、小林が中間ちゆうげん三人走り寄つて、馬よりさかさまに引き落としまへて首を切つて、主の手にこそ渡しけれ。




越後入道(高師泰もろやす)は半町ばかり後を進んでいましたが、これを見て馬を返そうとするところに、後から来た吉江小四郎(上杉能憲よしのりの家臣)が、槍で背骨より左胸の下まで突き通しました。(高師泰は)突かれて槍に取り付き、懐に差した打ち刀を抜こうとするところに、吉江の中間([武士の下位の者])が走り寄り、鐙の鼻を返して引き落としました。落ちると首を掻き切って、顎門([顎])から喉に貫いて、太刀に付けて馳せて行きました。高豊前五郎は、小柴新左衛門に討たれました。高備前守は、井野弥四郎が組んで落として首を捕りました。越後将監(高師世もろよ。高師泰の子)は、長尾彦四郎が馬の諸膝を切って、馬から落ちるところを二太刀打ちました。(高師世が)打たれて少し弱るところを、押さえて首を斬りました。遠江次郎は小田左衛門五郎が切って落としました。山口入道は小林又次郎が引っ組んで差し殺しました。彦部七郎は、小林掃部助が背後より斬り懸かると、太刀影に馬が驚いて深田の中へ落ちました。彦部は馬に乗り直すと、「味方はおらぬか、一所に馳せ寄って、思い思いに討ち死にせよ」と叫びましたが、小林(掃部助)の中間([武士の下位の者])が三人走り寄って、馬からさかさまに引き落とし踏み付けて首を切って、主(上杉能憲よしのり)の手に渡しました。


続く


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by santalab | 2016-10-01 09:02 | 太平記 | Comments(0)

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