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「太平記」師直以下被誅事付仁義血気勇者の事(その6)

小清水の合戦の後、執事方のつはものども十方に分散して、残る人なしと云ひながら、今朝松岡まつをかじやうを打ち出づるまでは、まさしく六七百騎もありと見しに、この人々の討たるるを見ていづちへか逃げ隠れけん、今討たるる処十四人の外は、その中間下部しもべに至るまで、一人もなく成りにけり。十四人と申すも、日来皆度々の合戦に、名を揚げ力をたくましくしたる者どもなり。たとひ運命尽きなば始終こそ不叶とも、心を同じくして戦はば、などか分々ぶんぶんの敵に合つて死せざるべきに、一人も敵に太刀を打ち著けたる者なくして、切つては被落押さへては首を被掻、無代むたいに皆討れつる事、天の責めとは知りながら、うたてかりける不覚かな。




小清水(越水。現兵庫県西宮市)の合戦の後、執事(高師直もろなほ)方の兵どもは十方に散って、残る人はいないといいながら、今朝松岡城(現神戸市須磨区)を出るまでは、たしかに六七百騎もあると思われましたが、この人々が討たれるのを見てどこへ逃げ隠れたか、今討たれた十四人のほかは、その中間([武士の下位の者])下部([雑用に使われる者])にいたるまで、一人もいませんでした。この十四人は、日来皆度々の合戦で、名を上げ勢い盛んな者どもでした。たとえ運命は尽きて勝つことは叶わず止まり、心を同じくして戦っていれば、それぞれ敵に合って死ぬことはなかったものを、一人も敵に太刀を打ち付ける者もなく、斬って落とされ首を掻かれ、甲斐もなく皆討たれたのは、天の責めとは知りながら、みっともないことでした。


続く


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by santalab | 2016-10-02 09:20 | 太平記 | Comments(0)

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