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「太平記」師直以下被誅事付仁義血気勇者の事(その7)

それ兵は仁義の勇者、血気の勇者ようしやとて二つあり。血気の勇者とまうすは、合戦に臨む毎に勇み進んでひぢを張り強きを破り堅きを砕く事、如鬼忿神ふんしんの如くすみやかなり。しかれどもこの人もし敵の為に以利含め、御方の勢を失ふ日は、のがるに便りあれば、あるひは降人かうにんに成つてはぢを忘れ、あるひは心もこらぬ世を背く。如此なるはすなはちこれ血気の勇者なり。仁義の勇者と申すは必ずしも人と先を争い、敵を見て勇むに高声多言かうじやうたげんにしていきほひを振るひ臂を張らざれども、一度約をなして憑まれぬる後は、二心を不存ぜ心不変して臨大節心ざしを奪はれず、かたぶく所に命を軽んず。如此なるは則ち仁義の勇者なり。今の世聖人去つて久しく、梟悪けうあくに染まること多ければ、仁義の勇者は少なし。血気の勇者はこれ多し。




兵には仁義の勇者、血気の勇者の二つがあります。血気の勇者と申すのは、合戦に臨む毎に勇み進んで肘を張り([肘を突っ張っていかにも強そうな様子をする])、鬼の如く怒れる神の如くたちまち強きを破り固きを砕きます。けれども血気の勇者は敵が勝ち、味方の勢を失ったならば、もしや助かるかと、あるいは降人になって恥を忘れ、あるいは発心なしに出家するものです。このような者が血気の勇者なのです。仁義の勇者と申すのは必ずしも人と先を争い、敵を見て勇むに高声多言にして勢いを振るい肘を張ることはありませんが、一度約束して頼まれた後は、二心なく心変わりもせず大節([国家の存亡にかかわる重大事])に臨んで心ざしを失わず(『臨大節而不可奪也』。『論語』)、弱みに命を軽んじて戦うものです。このような者もこそ仁義の勇者なのです。今の世は聖人が去って久しく、梟悪([人の道に背くこと])に染まること多ければ、仁義の勇者は少ないものです。血気の勇者は多くおりますが。


続く


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by santalab | 2016-10-02 09:24 | 太平記 | Comments(0)

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