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「太平記」就直義病悩上皇御願書の事(その3)

勅使勘解由かげゆの長官公時きんとき、御願書ごぐわんしよを開いて宝前はうぜんひざまつき、泪を流して、高らかに読み上げ奉るに、宝殿しばらく振動して、御殿の妻戸開く音かすかに聞こへけるが、まことに君臣合体がつていのまことを感じ霊神擁護の助けをや加へ給ひけん。勅使帰参して三日の中に、直義ただよし朝臣病ひ忽ち平愈へいゆうし給ひけり。これを聞く者、「難有かな、昔しうの武王病ひに臥して崩じ給はんとせし時、周公旦しうこうたん天に祈つて命に替はらんとし給ひしかば、武王の病ひ忽ちえて、天下てんが無為の化に誇るに相似たり」と、聖徳を感ぜぬ者こそなかりけれ。またかたはらに吉野殿方を引く人は、「いでやいたづら事な云ひそ。神不享非礼、欲宿正直頭、何故か諂諛てんゆいつはりを受けん。ただ時節をりふしよく、し合はせられたる願書なり」と、欺く人も多かりけり。




勅使勘解由長官公時(唐橋公時)が、願書を開いて宝前にひざまずき、涙を流して、高らかに読み上げると、宝殿はしばらく振動して、御殿の妻戸を開く音がかすかに聞こえました、まことに君臣合体のまことを感じ霊神擁護の助けを加えられたか。勅使が帰参して三日のうちに、直義朝臣(足利直義。足利尊氏の弟)の病いはたちまち平愈しました。これを聞く者は、「ありがたいことかな。昔周の武王(周朝の創始者)が病いに臥して崩御しようとした時、周公旦(周武王の弟)が天に祈って命に替わろうとしましたが、武王の病いはたちまちに癒えて、天下無為([自然のままであること])の化に誇ったのと同じ」と、聖徳を感じない者はいませんでした。またまた吉野殿(第九十七代後村上天皇)方を贔屓する人は、「滅相もないことを言うものではない。神は非礼を赦さないものよ、正直の頭に神宿る([正直な人には、必ず神や天の、助けがあるという教え])諂諛([媚びへつらうこと])の偽りなど受けるものか。たまたま、よい時機に願書をなしただけのことよ」と、うそぶく人も多くいました。


続く


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by santalab | 2016-10-12 00:16 | 太平記 | Comments(0)

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