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「太平記」小清水合戦の事付瑞夢の事(その1)

去るほどにその日の暮れほどに、摂津の国の守護赤松信濃のかみ範資のりすけ、使者を以つて申しけるは、「八幡より石堂いしたう中務の大輔・畠山阿波あはの守国清くにきよ・上杉蔵人くらんどの大夫を大将にて、七千余騎を光明寺の後攻ごづめの為にとて、被差下なり。前には光明寺のじやう堅く守つて、後ろに荒手の大敵懸かりなば、由々しき御大事にて候ふべし。ただ先づその城をばさしおかれさふらひて、討つ手の下向げかう相支あひささへ、神尾かんのう十林寺じふりんじ小清水こしみづの辺にて御合戦候はば、敵の敗北非疑処。御方一戦に利を得ば、敵所々に軍すと云ふとも、いつまでかこらへ候ふべき。これただ一挙に戦を決して、万方に勝つ事を計る処にて候ふべし」と、追々早馬を打たせて、一日に三度までこそ申されけれ。将軍を始め奉て師直もろなほ師泰もろやすに至るまで、げにも聞こゆる如くならば、敵は小勢なり。御方はこれに十倍せり。けはしき山の城を責むればこそ叶はね、平場に懸け合ひて勝負を決せんに、御方不勝と云ふ事不可有。さらばこの城をさしおいて、先づ向かふなる敵に懸かれとて、二月十三日じふさんにち、将軍も執事兄弟も、光明寺の麓を御立ちあつて兵庫ひやうご湊川みなとがはへ馳せ向かはる。畠山阿波あはかみ国清きよくには、三千余騎にて播磨の東条とうでうにありけるが、この事を聞きて、さてはいづくにてもあれ、執事兄弟のあらんずる所へこそ向かはめとて、湯山ゆのやまを南へ打ち越えて、打出うちでの北なる小山に陣を取る。光明寺に立て篭もりつる石堂右馬の頭かみ・上杉左馬の助も光明寺をば打ち捨てて皆畠山が陣へ馳せくははる。




やがてその日の暮れほどに、摂津国の守護赤松信濃守範資(赤松範資。赤松則村のりむらの子)が、使者をもって言付けがありました、「八幡(現京都府八幡市にある石清水八幡宮)より石塔中務大輔(石塔頼房よりふさ)・畠山阿波守国清(畠山国清)・
上杉蔵人大夫(上杉憲顕のりあき?ただし民部大輔)を大将として、七千余騎を光明寺(現京都府長岡京市にある寺院)の後詰め([敵の後ろへまわって攻める軍隊])のために、差し下しました。前には光明寺城(現兵庫県加東市にあった城)を固く守られ、後ろからは新手の大敵が懸かれば、由々しき大事となりましょう。まずは城のことは差し置いて、討っ手の下向を防ぎ、神尾(神呪寺。現兵庫県西宮市)・十林寺(鷲林寺。現兵庫県西宮市)・小清水(越水。現兵庫県西宮市)の辺にて合戦すれば、敵の敗北は間違いございません。味方がこの一戦に勝てば、敵が所々で軍したところで、いつまで持ちこたえることができましょうや。ただ一挙に戦を決して、万方に勝つ事を計るところでございます」と、追々早馬を打たせて、一日に三度まで申し伝えました。将軍をはじめ師直(高師直)・師泰(高師泰)にいたるまで、聞く通りならば、敵は小勢である。味方はこの十倍に及ぶ。険しき山城を攻め落とすことは叶わぬとも、平場に駆け合って勝負を決すれば、味方が勝たずということなし。ならば光明寺城は差し置いて、まず向かう敵に懸かれと、(正平六年(1351))二月十三日に、将軍も執事兄弟(高師直・師泰)も、光明寺の麓を立って兵庫の湊川(現兵庫県神戸市中央区・兵庫区)に馳せ向かいました。畠山阿波守国清(畠山国清)は、三千余騎で播磨の東条(現兵庫県加東市)にいましたが、これを聞いて、ならばどこであれ、執事兄弟のおられる所へ向かおうと、湯山(有馬?現兵庫県神戸市北区)を南へ打ち越えて、打出(打出浜。現兵庫県芦屋市)の北の小山に陣を取りました。光明寺に立て籠っていた石塔右馬頭(石塔頼房よりふさ)・上杉左馬助(上杉朝房ともふさ。上杉憲顕の弟)も光明寺を打ち捨てて皆畠山(国清)の陣へ馳せ加わりました。


続く


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by santalab | 2016-10-12 07:24 | 太平記 | Comments(0)

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