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「太平記」越後守自石見引返事(その3)

おととの又五郎これを見て、哀れよからんずる敵に組んで、指し違へばやと思ふ処に、火威ひをどしの鎧>くれなゐ母衣ほろ懸けたる武者一騎、合近あひぢかに寄り合ふたる。
そ」と問へば、土屋平三と名乗る。陶山につこと笑うて、「敵をば嫌ふまじ、寄れ組まん」と云ふままに、引つ組んで二疋が中へどうど落つる。落ち付く処にて、陶山上になりければ、土屋を取つて押さへて首を掻かんとするを見て、道口みちくち七郎しちらう落ち合つて陶山が上に乗り懸かる。陶山下なる土屋をば左の手にて押さへ、上なる道口を掻い掴んで、捩頚ねぢくびにせんと振りかへりて見ける処を、道口が郎等らうどう落ち重なつて陶山が引敷ひつしきの板を畳み上げ、上げ様に三刀みかたな指したりければ、道口・土屋は助かりて陶山は命を止めたり。陶山が一族郎等これを見て、「何の為に命をしむべき」とて、長谷の与一・原の八郎左衛門はちらうざゑもん・小池新平衛以下の一族若党わかたうども、大勢の中へつては入り、破つては入り、一足も引かず皆切り死ににこそ死にけれ。上杉若干そくばくの手の者を打たせながら、後陣ごぢんの軍には勝ちにけり。




弟の又五郎はこれを見て、なんということよよい敵と組んで、刺し違えようと思うところに、緋威しの鎧に紅の母衣([矢や石などから防御するための甲冑の補助武具。兜や鎧の背に巾広の絹布をつけて風で膨らませるもの])を懸けた武者が一騎、近付いて来ました。「誰だ」と訊ねると、土屋平三と名乗りました。陶山はにっこり笑って、「敵を選り好みできまい、寄れ組んでやろう」と言うままに、引っ組んで二匹の間にどうと落ちました。落ちて、陶山が上になったので、土屋を取って押さえて首を掻こうとするのを見て、道口七郎が落ち合って陶山の上に乗り懸かりました。陶山は下の土屋を左手で押さえ、上の道口を抱き込んで、捩首にしようと振り返り見るところに、道口の郎等([家来])が落ち重なって陶山の引敷の板([鎧の背面の草摺])を畳み上げ、上げ様に三刀刺したので、道口・土屋は助かり陶山は死にました。陶山の一族郎等はこれを見て、「何のために命を惜しむべき」と、長谷与一・原八郎左衛門・小池新平衛以下の一族若党どもが、大勢の中へ破って入り、破って入り、一足も引かず皆斬られて死にました。上杉は若干の手の者が討たれながらも、後陣の軍に勝ちました。


続く


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by santalab | 2016-11-04 08:19 | 太平記 | Comments(0)

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