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「太平記」越後守自石見引返事(その4)

宮下野のかみ兼信かねのぶは、始め七十騎しちじつきにて中の手にありけるが、後陣ごぢんの軍に御方打ち負けぬと聞きて、いつの間にか落ち失せけん、ただ六騎に成りにけり。兼信四方しはうをきつと見て、「よしよしあるに甲斐なき大臆病おくびやうの奴ばらは、足纏あしまとひに成るに、落ち失せたるこそ逸物いちもつなれ。敵未だ人馬の息を休めぬ前に、いざや懸からん」と云ふままに、六騎馬の鼻を双べて懸け入る。これを見て、小旗一揆に、河津・高橋、五百余騎をめいて懸かりけるほどに、上杉が大勢跡より引き立ちて、一度も遂に返さず、混引ひたひきに引きける間、上杉深手を負ふのみに非ず、打たるる兵三百余騎、きづかうむる者は数を知tらず。その道三里が間には、鎧・腹巻・小手・髄当すねあて・弓矢・太刀・刀を捨てたる事、足の踏み所もなかりけり。備中の合戦には、越後ゑちごかみ師泰もろやす念なく打ち勝ちぬ。




宮下野守兼信(宮兼信)は、はじめ七十騎で中の手にいましたが、後陣の軍に味方が打ち負けたと聞いて、いつの間に落ち失せたか、わずか六騎になっていました。兼信は四方をきっと見て、「まあよいいても役にも立たぬ大臆病の奴どもは、かえって足手纏いになるものだ、落ち失せたのは逸物([群を抜いて優れているもの])よ。敵が人馬の息を休めぬ前に、懸かろうではないか」というままに、六騎が馬の鼻を並べて駆け入りました。これを見て、小旗一揆に、河津・高橋、五百余騎が喚いて懸かったので、上杉の大勢は後ろに下がって、一度も遂に返さず、ひたすら引き退きました、上杉は深手を負うばかりでなく、討たれる兵は三百余騎、疵を被る者は数知れませんでした。その道三里の間には、鎧・腹巻・小手・髄当・弓矢・太刀・刀が捨てられて、足の踏み場もありませんでした。備中の合戦には、越後守師泰(高師泰)が容易く打ち勝ちました。


続く


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by santalab | 2016-11-05 07:28 | 太平記 | Comments(0)

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