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「太平記」光厳院禅定法皇行脚事(その4)

古へもかかる事やあるべきと、君臣共に捨つる世を、さすがに思し召し出でければ、涙の懸かる御袖は、濡れて干すべき隙もなし。行く末心細き針道を経て御登山ありければ、山また山、水また水、登臨いづれの日か尽くさんと、身力疲れて思し召されるにも、先年大覚寺の法皇の、この寺へ御幸なりしに、供奉ぐぶ卿相けいしやう雲客うんかく諸共に、一ちやうに三度の礼拝をして、かうべを地に付け、まことを致されける事も、あり難かりける御願かな。予が在位の時も、世しづかなりせば、などかその芳躅はうしよくを踏まずと、思し召しなぞらへらる。




昔もこのようなことはなかったと、君臣ともに捨てた世を、さすがに思い出されて、涙の懸かる袖は、濡れて干すべき隙もありませんでした。行く末心細い針道を経て山を登ると、山また山、川また川、登臨([高い所に登って下を眺め渡すこと])はいずれの日のことかと、身は疲れて思うには、先年大覚寺の法皇(第九十六代後醍醐院)が、この寺に御幸になられた時、供奉の卿相雲客([公卿と殿上人])がともに、一町に三度の礼拝をして、頭を地に付け、まこと([誠実。誠意])を致されましたが、ありがたい御願でしたか。予が在位の時も、世が静かなれば、どうしてその芳躅([先人の業績・事跡をたたえていう語。よい行跡])を踏まぬことがあろうかと、思われるのでした。


続く


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by santalab | 2016-12-07 08:39 | 太平記 | Comments(0)

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