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「太平記」越後勢越越前事(その2)

越後の勢両国二箇度の合戦に打ち勝つて、北国所々の敵恐るるに足らずと思へり。このままにてやがて越前へ打ち越ゆべかりしが、ここより京までの道は、多年の兵乱に、国ついへ民疲れて、兵粮ひやうらうあるべからず。加賀の国にしばらく逗留とうりうして行末の兵粮を用意すべしとて、今湊いまみなとの宿にじふ余日まで逗留す。その間に軍勢、つるぎ白山しらやま以下所々の神社仏閣に打ち入つて、仏物神物ぶつもつしんもつをかし取り、民屋みんをく追捕ついふし、資財を奪ひ取る事法に過ぎたり。嗚呼ああ「霊神為怒則、災害満岐」といへり。この軍勢の悪行あくぎやうを見るに、その罪もし一人に帰せば、大将義貞よしさだ朝臣、この度の大功を立てん事如何あるべからんと、兆前てうぜんに機を見る人は密かにこれを怪しめり。




越後勢(新田義貞)は越中・加賀両国二箇度の合戦に打ち勝って、北国所々の敵恐れるに足らずと思いました。このまますぐに越前へ越えたいところでしたが、ここから京までの道は、多年の兵乱で、国に蓄えもなく人民は疲れて、兵粮が不足していました。加賀国にしばらく逗留して兵粮を用意すべしと、今湊宿(現石川県能美市)に十日余り逗留しました。その間に軍勢は、剣(現石川県白山市にある金剱宮きんけんぐう)・白山(現石川県白山市にある白山比咩しらやまひめ神社)以下所々の神社仏閣に打ち入り、仏物神物を盗み取り、民屋を追捕([奪い取ること])し、資財を奪ひ取ることは法に過ぎていました。ああ「霊神は怒り、災害は巷に満つ」といいます。この軍勢の悪行を見るに、その罪が一人に帰すものならば、大将義貞軍勢の(新田義貞)が、この度大功を上げることはないのではと、兆前に機を見る人は密かに危ぶみました。


続く


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by santalab | 2017-01-15 09:03 | 太平記 | Comments(0)

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