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「太平記」八幡炎上の事(その1)

将軍この事を聞こし召されて、「八幡やはたの城未だ責め落とさで、兵攻戦に疲れぬる処に、脇屋右衛門うゑもんすけ義助よしすけ山門と成し合つて、北国より上洛しやうらくすなるこそ由々しき珍事なりけれ。に臨んで引かば、南方の敵勝つに乗るべし。未だ事の急にならぬ先に、急ぎ八幡の合戦をさしおいて、京都へかへつて北国の敵を相待あひまつべし」と、かうの武蔵のかみの方へぞ下知げぢし給ひける。師直もろなほこの由を聞きて、このじやうを責め懸かりながら、落とさで引つかへしなば、南方の敵に利を得られつべし。さてまた京都を閣かば、北国の敵に隙を伺はれつべし。かれこれ如何せんと、進退きはまつて思へければ、ある夜の雨風の紛れに、逸物いちもつの忍びを八幡山やはたやまへ入れて、神殿に火をぞ懸けたりける。




将軍(足利尊氏)はこれを聞いて、「八幡城(現京都府八幡市)もまだ攻め落とさぬ前に、兵は攻め戦に疲れておるというのに、脇屋右衛門佐義助(脇屋義助)が山門(延暦寺)を味方に付けて、北国より上洛するとは一大事ぞ。今引かなくては、南方の敵は勝つに乗るであろう。大事にならぬ前に、急ぎ八幡の合戦を差し置いて、京都に帰って北国の敵に備えよ」と、高武蔵守(高師直)に命じました。師直はこれを聞いて、この城を攻めながら、落とせずに引き返せば、南方の敵は勢いに乗るであろう。とはいえ京都を差し置けば、北国の敵に隙を突かれてしまう。さてはどうしたものかと、進退窮まって、ある夜の雨風の紛れに、逸物([群を抜いて優れているもの])の忍びを八幡山に忍び込ませて、(石清水八幡宮の)神殿に火を懸けさせました。


続く


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by santalab | 2017-01-18 07:40 | 太平記 | Comments(0)

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