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「太平記」八幡炎上の事(その2)

この八幡はちまん大菩薩とまうし奉るは、忝くも王城鎮護の宗廟にて、殊更源家げんけ崇敬そうきやうの霊神にておはしませば、寄せ手よも社壇を焼くほどの悪行はあらじと、官軍くわんぐん油断しけるにや、城中じやうちゆうあわて騒動して煙の下に迷倒めいだうす、これを見て四方しはうの寄せ手十万じふまん余騎、谷々より攻め上つて、既に一二の木戸口までぞ攻め入りける。このじやう三方さんぱう嶮岨けんそにして登り難ければ、防ぐにその便りあり。西へなだれたる尾崎をさきは平地に続きたれば、わづかに堀り切つたる乾堀からほり一重ひとへたのんで、春日の少将せうしやう顕信あきのぶ朝臣の手の者ども、五百余騎にて支へたりけるが、敵の火を見て攻め上りけるいきほひに心を迷はして、皆引き色にぞ成りにける。




石清水八幡宮の八幡大菩薩と申すは、畏れ多くも王城(平安京)鎮護の宗廟で、とりわけ源家崇敬の霊神でしたので、寄せ手はまさか社壇を焼くほどの悪行はすまいと、官軍は油断したのか、城中はあわて騒動して煙の下に迷倒しました、これを見て四方の寄せ手十万余騎が、谷々より攻め上って、すでに一二の木戸口までぞ攻め入りました。この城は三方は嶮岨にして登り難く、防ぐに適した地形でした。西になだらかに下る尾崎は平地に続いていましたので、わずかに堀り切った空堀一重を頼みにして、春日少将顕信朝臣(北畠顕信)の手の者どもが、五百余騎で防いでいましたが、敵が火を見て攻め上る勢いに動揺して、皆引き色になりました。


続く


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by santalab | 2017-01-18 07:37 | 太平記 | Comments(0)

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