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「太平記」八幡炎上の事(その4)

松山その色を見て、覿面てきめんの勝負敵よりもなほ怖ろしくや思ひけん、「暫くしづまり給へ、公私の大事この時なれば、我が命しむべきにあらず。いで一戦して敵に見せん」と云ふ侭に、戦慄はななく戦慄くわしり立つて、そばにありける大石の、五六人して持ち上ぐるほどなるを軽々とひつさげて、敵の群がつて立ちたるその中へ、十四五ほど大山の崩るるが如くに投げたりける。寄せ手数万のつはものども、この大石に打たれて将碁倒しやうぎたふしをするが如く、一同に谷底へころび落ちければ、おのが太刀長刀なぎなたに突き貫かれて、命をとし疵をかうむる者幾千万と云ふ数を知らず。今夜既に攻め落されぬと見へつる八幡やはたの城、思ひの外にこらへてこそ、松山が力はただ高木が身にありけりと、わらはぬ人もなかりけり。




松山(九郎)は高木十郎の顔色を見て、覿面([面と向かうこと])の勝負は敵よりもなお恐ろしく思ったか、「しばらく落ち着かれよ、公私の大事がこの時ならば、我が命など惜しくはない。よし一戦して敵に力のほどを見せてやろうぞ」と言うままに、恐る恐る走り立ると、傍らにあった、五六人でやっと持ち上がるほどの大石を軽々と持ち上げて、敵が群がり立つその中へ、十四五ばかり大山が崩れが如く投げました。寄せ手の数万の兵どもは、この大石に打たれて将碁倒しに、一同に谷底へころび落ち、己の太刀長刀に突き貫かれて、命を落とし疵を被る者は幾千万とも知れませんでした。この夜すでに攻め落されるかと思われた八幡城(現京都府八幡市)は、思いに反して堪えました、松山の力は高木のお陰だと、よろこばぬ者はいませんでした。


続く


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by santalab | 2017-01-20 07:21 | 太平記 | Comments(0)

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