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「太平記」義貞自害の事(その1)

燈明寺とうみやうじの前にて、三万余騎を七手に分けて、七つの城を押し阻てて、先づ向かひじやうをぞ取られける。兼ねての廃立には、「前なる兵は城に向かひ逢ふて合戦を致し、後ろなる足軽はやぐらを掻き屏を塗つて、向かひ城を取り済ましたらんずる後、漸々ぜんぜんに攻め落とすべし」と議定ぎぢやうせられたりけるが、平泉寺の衆徒の籠もりたる藤島ふぢしまの城、もつてのほかに色めき渡つて、やがて落つべく見へける間、数万の寄せ手これに機を得て、先づ向かひ城の沙汰を差し置き、屏に付き堀に漬かつてをめき叫んで攻め戦ふ。衆徒も落ち色に見へけるが、とても遁るべき方のなきほどを思ひ知りけるにや、身命を捨ててこれを防ぐ。官軍くわんぐん櫓をくつがへして入らんとすれば、衆徒走木わしりきを出だして突き落とす。衆徒橋を渡つて打つて出づれば、寄せ手に官軍くわんぐんきつさき調そろへて斬つて落とす。追ひつかへしつ入れ替はる戦ひに、時刻押し移つて日すでに西山に沈まんとす。




(新田義貞は)燈明寺(現福井県福井市)の前で、三万余騎を七手に分けて、七つの城を押し阻てて、まず向かい城を取りました。かねての廃立([二つのものを比べ、 一方を廃し、他方を立てること])には、「前の兵には城に向かって合戦を致し、後ろの足軽は櫓を掻き屏を塗って、向かい城を取り済ました後に、順次攻め落とせ」と議定がありましたが、平泉寺(現福井県勝山市)の衆徒([僧])が籠もった藤島城(現福井県福井市)は、もってのほかにあわてふためいて、やがて落ちると見えたので、数万の寄せ手はこれに機を得て、先づ向かい城の沙汰を差し置き、塀に付き堀に漬かって喚き叫んで攻め戦いました。衆徒も落ち色に見えましたが、とても遁るべき方のなきほどを思い知っていたのか、身命を捨ててこれを防ぎました。官軍が櫓を倒して内に入ろうとすれば、衆徒は走り木を出して突き落としました。衆徒が橋を渡って打って出れば、寄せ手に官軍は切っ先を並べて斬って落としました。追いつ返しつ入れ替わる戦いに、時刻は押し移って日はすでに西山に沈もうとしていました。


続く


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by santalab | 2017-01-26 07:09 | 太平記 | Comments(0)

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