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「太平記」自伊勢進宝剣事黄粱夢事(その3)

これによつて四海しかいいよいよ乱れて一天いまだしづかならず。ここに百王鎮護ちんご崇廟そうべうの神、竜宮に神勅を下されて、元暦げんりやくいにしへ海底にしづみし宝剣を召し出だされたるものなり。すはここに立ちて我を見るあの法師の手に持ちたるぞ。便宜びんぎ伝奏てんそうに付けてこの宝剣を内裏へまゐらすべし。言ふところ不審あらばこれを見よ」とて、円成ゑんじやうに走り懸かつて、手に持ちたる光り物を取つて、涙をはらはらと流し額より汗を流しけるが、しばらく死に入りたるていに見へて、物の怪はすなはち去りにけり。神託不審あるべきにあらざれば、斎所さいしよを始めとして、見及ぶところの神人じんにんら連署の起請きしやうを書いて、円成に与ふ。円成これを錦の袋に入れて首に懸け、託宣に任せて先づ南都へぞ赴きける。




こうして四海([国内])はますます乱れて一天いまだ静かならず。そこで百王鎮護の崇廟の神が、竜宮に神勅を下されて、元暦の昔海底に沈んだ宝剣を召し出されたのだ。なんとここに立って我を見るあの法師の手に持っておるぞ。便宜([ある目的や必要なものにとって好都合なこと])の伝奏に付けてこの宝剣を内裏へ参らせよ。申すところに不審あらばこれを見よ」と言って、円成に走り懸かり、手に持っていた光り物を取って、涙をはらはらと流し額から汗を流し、しばらくは死んだように見えて、物の怪はたちまち去りました。神託に不審はありませんでしたので、斎所([斎王]=[伊勢神宮または賀茂神社に巫女として奉仕した未婚の内親王または女王])をはじめとして、見及ぶところの神人らは連署の起請([自分の言動に偽りのないことや約束に違背しないことを、神仏に誓って書き記した文書])を書いて、円成に与えました。円成はこれを錦の袋に入れて首に懸け、託宣に任せてまずは南都(奈良)へ赴きました。


続く


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by santalab | 2017-01-31 18:29 | 太平記 | Comments(0)

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