Santa Lab's Blog


「太平記」自伊勢進宝剣事黄粱夢事(その8)

素盞烏尊そさのをのみことは、出雲の大社おほやしろにておはします。このみこと草木を枯らし、禽獣の命を失ひ、もろもろ荒くおはせし間、出雲の国へ流し奉る。三神かくの如くあるひは天に上り、あるひは海に放たれ、あるひは流し給ひし間、天照太神あまてらすおほむかみこの国のあるじとなり給ふ。ここに素盞烏尊そさのをのみこと、我が国を取らんとていくさを起こして、小蝿さばへなす一千いちせんの悪神を率して、大和の国宇多野うだのに、一千いつせんつるぎを掘り立てて、城郭じやうくわくとして立て籠もり給ふ。天照太神これを由なき事に思し召して、八百万やほよろづの神たちを引き具して、葛城かづらきあま岩戸いはとに閉ぢ籠もらせ給ひければ、六合内くにのうち常闇とこやみになつて、日月の光も見へざりけり。この時に島根見尊しまねみのみことこれを歎きて、香久山かぐやまの鹿を捕らへて肩の骨を抜き、合歓はわかの木を焼いて、この事可有如何と占なはせ給ふに、鏡をて岩戸の前にかけ、歌を歌はば可有御出でと、うらに出でたり。

香久山の 葉若はわかもとに 占とけて 肩抜く鹿は 妻恋ひなせそ

と読める歌はすなはちこの意なり。




素盞烏尊(素戔男尊)は、出雲大社(現島根県出雲市)の祭神どれほど哀れにございます(出雲大社の祭神は大国主命ですが、本殿瑞垣外の出雲神社に素戔嗚尊を祀る。出雲神社は出雲大社本殿の真後ろにあり、素戔男尊を表立って祀ることができないためこのような形になったとか)。素戔男尊は草木を枯らし、禽獣の命を失い、気性が激しかったので、出雲国に流されました。三神はこのようにあるいは天に上り、あるいは海に放たれ、あるいは流されて、天照大神がこの国の主となりました。素戔男尊は、我が国を奪い取ろうと軍を起こして、五月蠅なす([荒ぶる])一千の悪神を率して、大和国宇多野(現奈良県宇陀市)に、一千の剣を立てて、城郭となして立て籠もりました。天照大神はこれをいわれなきことと思われて、八百万の神たちを引き具して、葛城(天香具山?)の天の岩戸(現奈良県橿原市?)に閉じ籠もられたので、国内は皆常闇になって、日月の光も見えなくなりました。島根見尊はこれを嘆いて、香久山の鹿を捕らえて肩の骨を抜き、合歓の木([ネムノキ])を焼いて、どうすればよいかと占うと、鏡を鋳て岩戸の前にかけ、歌を歌えば出て来られると、占いに出ました。

香久山のネムノキで占うためだ。肩抜き([肩抜きの占]=[鹿の肩の骨を抜き取り、波波迦 ははか=ウワミズザクラ。の木で焼き、表面にできた裂け目によって吉凶を占った])の鹿は妻を恋しく思うな。

と読んだ歌はこのことを表しているのでございます。


続く


[PR]
by santalab | 2017-01-31 19:14 | 太平記 | Comments(0)

<< 「太平記」自伊勢進宝剣事黄粱夢...      「太平記」自伊勢進宝剣事黄粱夢... >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
返歌 草枕…に因んで短歌..
by 井上勇 at 23:54
ただおし出づるままに の..
by SiNa at 21:40
「義経記」の御紹介記事を..
by Magohati38 at 02:04
すばらしいサイト おかげ..
by johsei1129 at 23:54
青き花咲く大地 気高き..
by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 02:50
全然現代語訳できてない
by あ at 02:04
 その島根県(旧出雲国東..
by 民俗学者 at 23:34
うーん、松島からまた仙台..
by 五十嵐洋(秋田県大館市) at 00:51
「下野の室の八嶋にて待て..
by 八島 守 at 12:03
ひょんな事から、このブロ..
by yoshy at 18:50
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧