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「太平記」北野通夜物語の事付青砥左衛門事(その21)

それ政道の為にあたなるものは、無礼・不忠・邪欲・功誇こうくわ・大酒・遊宴・抜折羅ばさら傾城けいせい・双六・博奕ばくえき剛縁かうえん・内奏、さては不直ふちよくの奉行なり。をさまりし世にはこれを以つていましめとせしに、今の代の為体皆これを肝要とせず。我こそ悪からめ。ちと礼義をも振る舞ひ、極信ごくしんをも立つる人をば、『あら見られずの延喜式や、あら気詰りの色代や』とて、目を引き、あふのきにたふれ笑ひ軽謾きやうまんす。これはただ一つのすぐなる猿が、九つの鼻欠け猿に笑はれて逃げ去りけるに不異。また仏神領に天役課役てんやくくわやくを懸けて、神慮冥慮みやうりよに背かん事を不痛。また寺道場に懸要脚僧物施料せれうむさぼる事をげふとす。




政道に害なすものは、無礼・不忠・邪欲・功誇([功を誇りうぬぼれること])・大酒・遊宴・婆娑羅([華美な衣装などで飾り立てたり、ぜいたくの限りをつくしたりして、この世を謳歌すること])・傾城([美女])・双六・博奕・剛縁([権力者との縁故。また、それを利用してわがままに振る舞うこと])・内奏([正式の手続きを経ずに天皇に奏上して請願すること])、果ては不直([正しくないこと])の奉行([上の者の命によって事を執行すること])よ。世が治まる時にはこれらを戒めとすべきに、今の時代を見るに皆これを大事に思っておらぬ。我が間違っておるのか。多少も礼義をも弁え、極信([まじめでつつしみ深いこと。控えめで素直なこと])をも立つ人を、『延喜式([平安中期の律令の施行細則])とはなんとも珍しい、なんと堅苦しい色代([挨拶])か』と申して、目を引き、仰向けに倒れ込んで笑い軽慢([人をばかにして、おごりたかぶること。人をあなどること])している。まるで一匹の正直な猿が、九匹の鼻欠け猿に笑われて逃げ去るようなものではないか。また仏神領に天役([中世、朝廷に大儀・造営があった時など、 臨時に賦課した雑税])課役([律令制で租税として朝廷が人民に出させた労働力と物品])を懸けて、神慮冥慮([神仏のおぼしめし])みやうりよに背くことを恐れぬ。また寺道場に要脚([税金])を懸け僧物([寄進された、衆僧共有の物])施料([布施としての金品])を貪ることを業としておる。


続く


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by santalab | 2017-02-28 08:08 | 太平記 | Comments(0)

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