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「太平記」北野通夜物語の事付青砥左衛門事(その34)

漁父ども大きに悦びて件の岩を掘り起こして見るに、摩羯魚まかつぎよを始めとして五丈六丈ある大魚どもその数を不知集まり居たり。小水にいきづく魚どもなれば、いづくにか可逃去なれば、不残漁父に被殺、多舌魚許りを生けたりけり。さればこの漁父と魚と諸共にしやうを替へて後、摩羯魚は瑠璃太子のつはものどもと成り、漁父は釈氏の刹利種せつりしゆとなり、多舌魚は今かへり忠の大臣と成つて摩竭陀国まかだこくを滅ぼしける。




漁父どもはたいそうよろこんでその岩を掘り起こして見れば、摩羯魚をはじめとして五丈六丈もある大魚がその数を知らず集まっておったのじゃ。小水に息吐く魚どもなれば、どこにも逃れることはできず、残らず漁父に殺されて、多舌魚だけが生き残ったのじゃよ。こうしてこの漁父と魚がともに生まれ変わり、摩羯魚は瑠璃太子(コーサラ国太子。ヴィドゥーダバ)の兵となり、漁父は釈氏(釈迦族)の刹利種([刹利]=[古代インド四姓制度の第二階級。婆羅門に つぐもので、王侯・貴族・武士の階級])となり、多舌魚は返り忠([主君に背いて敵方に通じること])の大臣となって摩竭陀国(マガダ国。古代インドにおける十六大国の一)を滅ぼしたのじゃ。


続く


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by santalab | 2017-03-05 09:12 | 太平記 | Comments(0)

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