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「太平記」北野通夜物語の事付青砥左衛門事(その38)

第五日に、阿難また昨日梨軍支りぐんしを忘れたりし事を浅ましく思し召して、これに与へん為にある家に行きていひひてかへり給ふ。道に荒狗あらいぬ数十疋すじつぴきわしり進みける間、阿難鉢を地に棄てて、這ふ這ふ帰り給ひしかば、その日も梨軍支餓ゑにけり。第六日に、目連尊者もくれんそんじや梨軍支が為に食を乞うて帰り給ふに、金翅鳥こんじてう空中より飛び下がりて、その鉢を取つて大海に浮かべければ、その日も梨軍支餓ゑにけり。第七日に、舎利弗しやりほつまた食を乞うて、梨軍支が為に持て行き給ふに、門戸もんこ皆堅くして不開。舎利弗以神力その門戸を開いて内へ入り給へば、にはかに地裂けて、御鉢金輪際こんりんざいへ落ちにけり。舎利弗、伸神力手御鉢を取り上げいひを食はせんとし給ふに、梨軍支が口にはかにつぐみて歯を開く事を不得。兔角するほどに時已に過ぎければ、この日も食らはで餓ゑにけり。




五日目に、阿難(阿難陀。釈迦の十大弟子の一人。 多聞第一)は昨日梨軍支を忘れたことを後悔して、梨軍支に食を与えるためにある家へ行って飯を乞うて帰った。道中狂犬が数十匹現れて襲って来ての、阿難は鉢を地に棄てて、やっとのことで帰ったんじゃが、その日も梨軍支は食に餓えてしもうた。六日目に、目連尊者(摩訶目犍連まかもつけんれん。釈迦の十大弟子の一人。神通第一)が梨軍支のために食を乞うて帰っておったが、金翅鳥([インド神話・仏典に見える想像上の鳥])が空中より飛び下りて、その鉢を取って大海に落として行った、その日も梨軍支は食にありつけなかったんじゃ。七日目に、舎利弗(釈迦の十大弟子の一人。智慧第一)がまた食を乞うて、梨軍支のために持って行ったが、門戸が皆堅く閉ざされて開かんじゃった。舎利弗は神力をもって門戸を開き内へ入ったんじゃが、にわかに地が裂けて、鉢は金輪際([大地の最下底のところ。金輪=地下にあって大地を支える大輪])に落ちてしもうた。舎利弗は、神力の手を伸べて鉢を取り上げ飯を食わそうとしたんじゃが、梨軍支の口は急に閉じて歯を開くことができなかったんじゃよ。そうこうするうちに時は過ぎて、この日も食うことができずに餓えてしもうた。


続く


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by santalab | 2017-03-06 08:15 | 太平記 | Comments(0)

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