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「太平記」大内裏造営の事付聖廟の御事(その8)

それより後、詩は捲盛唐波瀾先七歩才、文は漱漢魏芳潤、諳万巻書給ひしかば、貞観ちやうぐわん十二年三月二十三日にじふさんにち対策及第してみづか詞場しぢやうに折桂給ふ。その年の春都良香とりやうきやうの家に人集まつて弓を射ける所へ菅少将くわんせうしやうをはしたり。都良香、この公は無何と、学窓がくさうに聚蛍、稽古に無隙人なれば、弓の本末もとうらをも知り給はじ、的を射させ奉りわらはばやと思して、的矢に弓を取りへて閣菅少将の御まへに、「春の始めにて候ふに、一度ひとこぶし遊ばし候へ」とぞ被請ける。菅少将くわんせうしやうさしも辞退し給はず、つがひの逢ひ手に立ち合ひて、如雪はだを押しはだぬき、打ち上げて引き下ろすより、しばらしをりて堅めたるすがた、切つて放したる矢色・弦音つるおと弓倒ゆんだふし、五善いづれもたくましくいきほひあつて、矢所やつぼ一寸も退かず、五度のつづをし給ひければ、都良香感に堪へ兼ねて、みづから下りて御手を引き、酒宴及数刻、様々の引出物をぞ被進ける。




その後は、詩は盛唐([唐代を四分した第二期。唐詩の最盛期])にも勝り七歩の才([文才に恵まれていること]。曹操の子、曹植のこと)を凌ぎ、文は漢魏の芳潤([香り高くうるおいのあること。 また、その様])をくちすすぎ([すぐれた詩文を味わい学ぶ])、万巻の書を諳んじて、貞観十二年(870)三月二十三日には対策([ 律令制の官吏登用試験の一。文章博士が問題を出して文章得業生に答えさせるもの])に及第して詞場([詩文などを作る所。また、詩人・文人の社会 ])に折桂([日本の律令制で、官吏登用試験の策試に合格すること])しました。その年の春都良香よしか(菅原道真の師で平安時代の漢詩歌人)の家に人が集まって弓を射るところに菅少将(菅原道真)がやって来ました。都良香は、この公はきっと、学窓に蛍を集め、稽古([学問])ばかりしておるから、弓の本末([弓の下=本。と上=末])も知らぬであろう。的を射させて笑ってやろうと思い、的矢に弓を取り添え菅少将の御前に置いて、「春の初めです、一つ遊ばれよ」と勧めました。菅少将はわずかも辞退せず、相手に立ち合い、雪のような膚を押肌脱いで、打ち上げて引き下ろすより、しばらく弓を引き絞り固める姿、切って離す矢色([放たれて、飛んでいく矢の勢い])・弦音・弓倒し([矢所を見ながら両手を腰の位置に戻す時、弓を前面に倒す動作])、五善([弓を射る時の五つのよい形])はいずれもたくましく勢いがあって、矢壺を一寸も外さず、五度の十([弓の勝負は一度に二矢ずつ五度で決するところから、射た矢がすべて的に当たること])でした。都良香は感に堪えかねて、自ら下りて手を引き、酒宴は数刻に及び、様々の引出物を贈りました。


続く


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by santalab | 2017-03-24 08:11 | 太平記 | Comments(0)

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