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「太平記」大内裏造営の事付聖廟の御事(その13)

年久しく住み馴れ給ひし、紅梅殿を立ち出でさせ給へば、明け方の月かすかなるに、り忘れたるむめが香の御袖に余りたるも、今はこれや古郷こきやうの春の形見と思し召すに、御涙さへ留まらねば、

東風こち吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ

と打ち詠じ給ひて、今夜こよひ淀の渡しまでと、追つ立ての官人くわんにんどもに道を被急、御車にぞ被召ける。心なき草木までも馴れし別れを悲しみけるにや、東風吹く風の便りを得て、このむめ飛び去さつて配所の庭にぞ生ひたりける。されば夢の告げあつて、る人つらしとしまれし、宰府さいふの飛び梅これなり。




年久しく住み慣れた、紅梅殿(菅原道真の邸宅。現京都市下京区)を立ち出ると、明け方の月幽かにして、折り忘れた梅の香は袖に余り、今はこれが古郷の春の形見と思えば、涙を抑えきれずに、

東風が吹いたなら、この匂いを届けてほしい、梅の花よ。主がいないからといって、春を忘れるでないぞ。

と打ち詠じて、今夜のうちに淀の渡し(現京都市伏見区)までと、追っ立ての官人([流罪に処せられた者を流刑地へ護送した役人])どもに道を急かされ、車に乗りました。心ない草木までも馴れし別れを悲しむのか、東風吹く風の便りを得て、この梅が飛び去さって配所の庭に生えました。こうして夢の告げあって、折る人もつらいと惜しまれる、太宰府宰府の飛び梅がこれです。


続く


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by santalab | 2017-03-29 07:21 | 太平記 | Comments(0)

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