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「太平記」大内裏造営の事付聖廟の御事(その18)

その後菅丞相座席を立つて天に昇らせ給ふと見へければ、やがていかづち内裡の上に鳴り落ち鳴りのぼつて、高天も落地大地も如裂。一人いちじん百官はくくわん縮身消魂給ふ。七日七夜が間雨あらく風はげしくして世界如闇、洪水こうずゐ家々を漂はしければ、京白河の貴賎男女きせんなんによをめき叫ぶ声叫喚けうくわん・大叫喚の苦しみの如し。つひに雷電大内だいだいの清涼殿に落ちて、大納言清貫きよつらきやううへきぬに火燃え付きて伏しまろべども不消。右大弁希世まれよの朝臣は、心がうなる人なりければ、「たとひいかなる天雷なりとも、王威わうゐに不威や」とて、弓に矢を取りへて向かひ給へば、五体すくみてうつぶしたふれにけり。近衛こんゑ忠包ただかぬ鬢髪びんぱつに火付き焼け死にぬ。紀の蔭連かげつらは煙に咽んで絶え入りにけり。




その後菅丞相(菅原道真)が座席を立って天に昇るかと見れば、たちまち雷が内裏の上に鳴り落ち鳴り上り、天が地に落ち大地も裂けるかと思われました。一人(第六十代醍醐天皇)・百官は身を縮め魂を消しました。七日七夜の間雨は強く風は激しくして世界は闇のようとなって、洪水が家々を押し流しました、京白川の貴賎男女が、喚き叫ぶ声はまるで叫喚([十六小地獄の一])・大叫喚([十六小地獄の一。叫喚地獄の下に位置し、その十倍の苦を受けるという])の苦しみのようでした。遂に雷電が大内裏の清涼殿([天皇の日常生活の居所])に落ちて、大納言清貫卿(藤原清貫)の上衣に火が燃え付いて伏し転べども消えませんでした。右大弁希世朝臣(平希世)は、心猛くあったので、「たとえいかなる天雷であろうが、王威に怖れをなさぬことがあろうか」と申して、弓に矢を取り添えて向かいましたが、五体はすくんでうつ伏せに倒れてしまいました。近衛忠包(美努みの忠包)は髪に火が付いて焼け死にました。紀蔭連は煙に巻かれて死にました(紀蔭連は腹を焼かれて死んだという)。


続く


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by santalab | 2017-04-03 08:20 | 太平記 | Comments(0)

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