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「太平記」武蔵野合戦の事(その2)

小手差原こてさしばらにありと聞こへければ、将軍十万じふまん余騎を五手に分けて、中道なかみちよりぞ寄せられける。先陣は平一揆たひらいつき三万余騎、小手の袋・四幅袴よのはかま笠符かさじるしに至るまで一色いつしきに皆赤かりければ、殊更耀かかやいてぞ見へたりける。二陣には白旗一揆しらはたいつき二万余騎、白葦毛しろあしげ白瓦毛しろかはらけ白佐馬しろさめ・月毛なる馬に乗つて、練貫ねりぬきの笠符に白旌しらはたを差したりけるが、敵にも白旌ありと聞きてにはかに短くぞ切つたりける。三陣には花一揆、命鶴みやうづるを大将として六千余騎、萌黄もよぎ火威ひをどし紫糸むらさきいと・卯の花の妻取つたる鎧に薄紅うすくれなゐの笠符を付け、梅花一枝ひとえだ折つて兜の真つかふに差したれば、四方よもの嵐の吹く度に鎧の袖や匂ふらん。四陣は御所一揆とて三万余騎、二つ引両ひきりやうの旌のもとに将軍を守護し奉て、御内の長者・国大名、しづかに馬を控へたり。




敵は小手指原(現埼玉県所沢市)にありと聞こえたので、将軍(足利尊氏)は十万余騎を五手に分けて、中道(現埼玉県所沢市)より寄せました。先陣は平一揆が三万余騎、小手の袋・四幅袴([前後各二幅ふたので仕立てた、ひざ丈くらいの袴])・笠符に至るまで一色で皆赤く、とりわけ輝くようでした。二陣には白旗一揆が二万余騎、白葦毛([一般に灰色の馬])・白瓦毛([灰白色・黄白色で、 たてがみ・下肢・ひづめが黒いもの])・白佐馬([クリーム色の毛を持つもの])・月毛([栗毛])の馬に乗って、練貫([縦糸に生糸、横糸に練り糸を用いた平織りの絹織物])の笠符に白旗を差していましたが、敵にも白旗があると聞いてにわかに短く切っていました。三陣には花一揆が、命鶴(饗庭氏直うぢなほ)を大将として六千余騎、萌黄・火威・紫糸・卯の花の褄取りの鎧([鎧の縅の一。袖・草摺・しころの片側の端を斜めに色をかえて縅すもの])に薄紅の笠符を付け、梅花を一枝折って兜の真っ向に差していました、四方の嵐が吹く度に鎧の袖が匂うようでした。四陣は御所一揆という三万余騎、二つ引両(足利氏の紋)の旗の下に将軍(足利尊氏)を守護し、身内の長者・国大名が、静かに馬を控えました。


続く


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by santalab | 2017-04-24 08:11 | 太平記 | Comments(0)

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