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「太平記」北山殿謀反の事(その5)

主上しゆしやうこれを被御覧いよいよ夢の告げ怪しく被思召ければ、且く鳳輦ほうれんを留めて御思案ありける処に、竹林院ちくりんゐんの中納言公重きんしげきやう馳せ参じて被申けるは、「西園寺大納言公宗きんむね、隠媒のくはたてあつて臨幸りんかうを勧めまうす由、只今ある方より告げ示し候ふ。これより急ぎ還幸くわんかう成つて、橋本の中将ちゆうじやう俊季としすゑ、並びに春衡はるひら文衡ぶんひら入道を被召て、子細を御たづね候ふべし」と被申ければ、君去んぬる夜の夢告げの、今日の池水ちすゐの変ずるわざ、げにもやうありと思し召し合はせて、やがて還幸成りにけり。




主上(第九十六代後醍醐天皇)はこれをご覧になられ夢の告げを怪しく思われて、しばらく鳳輦([屋形の上に金銅の鳳凰を飾った輿 。天皇の晴れの儀式の行幸用のもの])を止められてどういうことかと思うところに、竹林院中納言公重卿(西園寺公重。西園寺公宗きんむねの弟)が馳せ参じて申すには、「西園寺大納言公宗(西園寺公宗)に、隠媒の企てあって臨幸を勧め申すと、ただ今ある方より知らせがありました。これより急ぎ還幸されて、橋本中将俊季(橋本俊季)、並びに春衡・文衡入道を召されて、子細をお尋ねされますよう」と申したので、君(後醍醐天皇)は昨夜の夜の夢告げ、今日の池水の変じた様子、なるほどと思われて、やがて還幸されました。


続く


by santalab | 2017-05-01 10:53 | 太平記

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