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「太平記」武蔵野合戦の事(その11)

案に不違義興よしおき義治よしはる、目の前に控へてあざむく敵にこらへ兼ねて、三百余騎を一手になし、敵の真ん中を懸けりて、蜘手十文字じふもんじに懸け立てんとをめいて懸けりけれども、仁木越後ゑちごかみすこしも不轟。「真ん中をらるな。敵に気を尽くさせよ」と下知して、いよいよ馬を立ち寄せ、透き間もなく控へたれば、面にある兵計り互ひに討たれてさつと引きけれども、追つても更に不懸、裏へとほりて戦へども、面はすこしも不騒、東へまはれども西はしづかなり。北へ廻れども南はかつて不轟。懸け寄すれば打ち違ひ、組んで落ちれば落ち重なる。千度百度ちたびももたび懸くれども、強陣がうぢん勢堅くして大将退く事なければ、義興・義治気疲れて東を差して落ちて行く。二十にじふ余町よちやう落ち延びて、誰々たれたれ討たれたると計るに、三百余騎ありつるつはものども、百余騎討たれて二百余騎ぞ残りける。




案に違わず義興(新田義興。新田義貞の次男)・義治(脇屋義治。新田義貞の弟、脇屋義助よしすけの子)は、目の前に控えて欺く敵に堪えかねて三百余騎を一手になし、敵の真ん中を駆け破って、蜘手十文字に駆けようと喚いて駆け出しましたが、仁木越後守(仁木義長よしなが)は少しも駆け合わせませんでした。「真ん中を破られるな。敵を疲れさせよ」と命じて、ますま馬を立ち寄せ、透き間もなく控えたので、面に立つ兵ばかり互に討たれてさっと引きましたが、追っても駆けず、裏に回って戦えども、面は少しも騒がず、東へ廻れども西は静かなままでした。北へ廻れども南は駆けず。駆け寄せれば打ち違い、組んで落ちれば落ち重なりました。千度百度駆けましたが、強陣の勢が固く防いで大将は退きませんでしたので、義興・義治は疲れて東を指して落ちて行きました。二十余町落ち延びて、誰が討たれたかと数えると、三百余騎いた兵どもは、百余騎討たれて二百余騎になっていました。


続く


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by santalab | 2017-05-06 08:11 | 太平記 | Comments(0)

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