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「太平記」笛吹峠軍の事(その7)

根津と長尾と、支度相違さうゐしぬと思ひければ、きつさきに貫きたる首をげて、乱れ髪を振り揚げ、大勢の中をつて通る。彼ら二人ににんが鋒にまはる敵、一人として兜の鉢を胸板むねいたまで真つ二つに破り著けられ、腰のつがひを切つて落とされぬはなかりけり。されども敵は大勢なり。これらはただ二騎なり、十方より矢衾やぶすまを作つて散々に射ける間、叶はじとや思ひけん、「あはれ運強き足利殿や」と高らかにあざむいて、閑々しづしづと本陣へぞ帰りける。




根津と長尾は、想定と違うと思い、切っ先に貫いた首を投げ捨てて、乱れ髪を振り上げ、大勢の中を駆け破って通りました。彼ら二人の切っ先に廻る敵は、一人として兜の鉢を胸板まで真っ二つに破り付けられ、腰の番いを切って落とされぬ者はいませんでした。けれども敵は大勢でした。かれらはただ二騎でしたので、十方より矢衾([射手がすきまなく並び立った列])を作って散々に矢を射たので、敵わないと思ったか、「なんと運の強い足利殿(足利尊氏)よ」と高らかに大口をたたいて、閑々と本陣に帰って行きました。


続く


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by santalab | 2017-05-20 08:06 | 太平記 | Comments(0)

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