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「太平記」兵部卿宮薨御の事付干将莫耶事(その6)

斯かる処に、父干将かんしやういにしへ知音ちいんなりける甑山人そうさんじん来たつて、眉間尺みけんじやくに向かつて云ひけるは、「我なんぢが父干将と交はりを結ぶ事年久しかりき。然れば、その朋友ほういうの恩を謝せん為、汝と共に楚王を可奉討事を可謀。汝もし父のあたを報ぜんとならば、持つ所の剣のきつさきを三寸ひ切つて口の中に含んで可死。我汝がくびを取つて楚王に献ぜば、楚王悦んで必ず汝がくびを見給はん時、口に含める剣の先を楚王に吹き懸けて、共に可死」と云ひければ、眉間尺みけんじやくおほきに悦んで、すなは雌剣しけんきつさき三寸ひ切つて、口の内に含み、みづから己がくびを掻き切つて、かくの前にぞ指し置きける。




そうこうするところに、父干将の古くからの知音([互いによく心を知り合った友])である甑山人が訪ね来て、眉間尺に向かって言うには、「わしはお前の父干将とは長い付き合いをしておった。だから、朋友の恩に報いるため、お前とともに楚王を討とうと思うておるのだ。お前が父の敵に復讐しようと思うておるのならば、持っておる剣の切っ先を三寸喰い切って口の中に含んで死ぬがよい。わしがお前の首を取って楚王に献上すれば、楚王はよろこんで必ずやお前の首を見るであろう、その時口に含んでおった剣の先を楚王に吹き懸けて、ともに死ぬがよい」と言うと、眉間尺はたいそうよろこんで、たりまち雌剣の切っ先を三寸喰い切って、口の内に含み、自ら己の首を掻き切って、客の前に差し置きました。


続く


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by santalab | 2017-05-21 07:36 | 太平記 | Comments(0)

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