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「太平記」八幡合戦事付官軍夜討の事(その12)

細河ほそかは陸奥のかみ・同じき相摸の守は、真木・葛葉くずはを打ちまはつて、八幡の西の尾崎をさき如法経塚によほふきやうづかの上に陣を取つて、堀一重を隔ててぞ攻めたりける。五月四日、官軍くわんぐん七千余騎が中より夜討ちに馴れたる兵八百人をすぐりて、法性寺左兵衛さひやうゑかみに付けらる。左兵衛の督昼ほどよりこの勢を我が陣へ集めて、笠符かさじるし一様いちやうに著けさせ、そと問はば、進むと名乗るべしと約束して、夜已に二三更にさんかうのほどなりければ、宿院しゆくゐんの後ろを廻つて如法経塚へ押し寄せ、八百人のつはものども、同音に鬨をどつと作る。細河が兵三千余人、暗さはくら分内ぶんないはなし、馬放れ人騒いで、太刀をも不抜得、弓をも不挽得ければ、手負ひ、討たるる者数を不知。遥かなる谷底へ人雪崩なだれをつかせて追ひ落とされければ、馬・物の具を捨てたる事、幾千万とも難知。




細川陸奥守(細川顕氏あきうぢ)・同じく相模守(細川清氏きようぢ)は、真木(現大阪府枚方市牧野)・葛葉(現大阪府枚方市樟葉)を打ち廻って、八幡(現京都府八幡市)の西の尾崎、如法経塚の上に陣を取って、堀一重を隔てて攻めました。五月四日に、官軍は七千余騎の中より夜討ちに馴れた兵八百人を選って、法性寺左兵衛督(藤原康長やすなが)に付けました。左兵衛督は昼ほどよりこの勢を我が陣に集めて、笠符を一様に付けさせ、誰かと問えば、進むと名乗れと決めて、夜が二三更(午後十時頃?)ほどになると、宿院([寺の宿泊所。僧坊。また、宿坊])の後ろを廻って如法経塚へ押し寄せ、八百人の兵どもが、同音に鬨をどっと作りました。細川(顕氏)の兵三千余人は、暗くて敵味方も見分けが付かず、馬は放れ人は騒いで、太刀も抜かず、弓も引けずに、手負い、討たれる者は数知れませんでした。遥かなる谷底へ雪崩のように追い落とされて、捨てた馬・物の具([武具])は、幾千万とも知れませんでした。


続く


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by santalab | 2017-06-03 09:27 | 太平記 | Comments(0)

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