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「太平記」南帝八幡御退失の事(その2)

その中に宮一人討たれさせ給ひぬ。四条しでうの大納言隆資たかすけ円明院ゑんみやうゐん大納言・三条の中納言雅賢まさかたきやうも討たれ給ひぬ。主上しゆしやうは軍勢に紛れさせ給はん為に、山本判官がまゐらせたりける黄糸の鎧を召して、栗毛なる馬に召されたるを、一の宮弾正左衛門だんじやうざゑもん有種ありたね追ひ懸け進らせて、「可然大将とこそ見進らせ候ふ。きたなくも敵に被追立、一度も返させ給はぬ者かな」と呼ばはり懸けて、弓杖ゆんづえ三杖みつゑ許り近付きたりけるを、法性寺左兵衛さひやうゑかみきつとかへりみて、「にくひ奴ばらが云ふ様かな。いで己の手柄のほどを見せん」とて、馬より飛んで下り、四尺八寸の太刀を以つて、兜の鉢を破れ砕けよとぞ打たれたる。さしもしたたかなる一の宮、尻居しりゐにどうど打ち据ゑられて、目暮れ胆消えにければ、暫く心を静めんと、目を塞ぎて居たる間に、主上遥かに落ち延びさせ給ひにけり。




その中に宮が一人(第九十六代後醍醐天皇皇子、法仁ほふにん法親王?)討たれました。四条大納言隆資(四条隆資)・円明院大納言・三条中納言雅賢卿(三条雅賢)も討たれました。主上(第九十七代後村上天皇)は軍勢に紛れるために、山本判官が参らせた黄糸の鎧を召して、栗毛の馬に乗っておられましたが、一宮弾正左衛門有種が追いかけて、「しかるべき大将とお見受けする。卑怯にも敵に追い立てられて、一度も返さぬとはどういうことか」と叫んで、弓杖三杖ばかりに近付くところを、法性寺左兵衛督が振り返り見て、「憎むべき奴の言い様よ。わしの手柄のほどを見せてやるぞ」と言って、馬から飛んで下り、四尺八寸の太刀で、兜の鉢を破れ砕けよと打ち付けました。したたかな一宮も、尻居に打ち据えられて、目は暮れ胆は消えて、しばらく心を静めようと、目を塞ぐ間に、主上は遥かに落ち延びられました。


続く


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by santalab | 2017-06-06 08:25 | 太平記 | Comments(0)

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