小君には、「麻呂が弟におはしけれど、子のやうに思ひ聞こえむ」など、いとよう語らひ聞こえ給ふ。いと思ふやうにめでたき様にて、かうのたまへば、見馴らひ給はぬ幼き心地には、いとうれしくて、「まろも、思ひ聞こえむ」など聞こえ給ふに、「おはせ」とあれば、入り給ひぬ。御乳母など、限りなく喜ばしう思ふ。
小君には、「わたしの弟ではあるが、我が子のように思うことにしよう」など、懇ろに申しました。願うままのうれしい言葉を、かけられて、慣れぬ幼な心には、とてもうれしくて、「わたしも、そう思うことにします」など答えました、「こちらにおいで」と声がしたので、小君は局に入りました。乳母たちは、限りなくうれしく思いました。
(続く)